■ネット販売には慎重意見
厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」は4日、緊急避妊薬のスイッチOTC化を要望する市民団体のほか、日本薬剤師会、日本産婦人科医会からヒアリングを行った。市民団体は「全ての女性と少女には緊急避妊薬にアクセスする権利がある」と主張したのに対し、日本産婦人科医会は、「現状のままではスイッチOTC化に反対」と回答した産婦人科医が7割弱に上るとのアンケート結果を公表。スイッチOTC化を認める条件として義務教育段階で性教育を充実させる取り組みを挙げた。
緊急避妊薬は、日本では処方箋が必要な医療用医薬品で、保険適用はされず自由診療となる。海外では約90カ国以上が薬局で処方箋の必要がなく薬剤師から購入できる。
産婦人科医の立場で、「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」に参加する遠見才希子氏は、「厚生労働省ウェブサイトに掲載される緊急避妊薬の対面診療可能な医療機関は全体の3%に過ぎない」と指摘。2019年7月に緊急避妊薬のオンライン診療が解禁となったものの、対応できる医療機関の少なさを問題視した。
その上で、「薬局は薬と健康の専門家であり、地域で身近な存在の医療従事者」とし、「緊急避妊薬は産婦人科医にしか取り扱えない特別な薬ではない。世界中の薬局で薬剤師が対応できている薬で、日本でも身近な薬局で処方箋なしで入手する選択肢が必要」と強調した。
スイッチOTC化に向けた懸念点として「悪用や濫用のおそれがある」との指摘については「繰り返し使用しても健康上のリスクは少なく、妊娠や安全でない中絶の潜在的リスクに比べはるかに安全」と述べた。
日本産婦人科医会は、産婦人科における緊急避妊薬処方の現状を探る目的で産婦人科医1万6680人を対象にアンケート調査を実施し、暫定的な結果を公表した。緊急避妊薬のOTC化について意見を聞いたところ、「無条件で賛成」が8%と1割に満たなかった。
同会は、日本で適切な性教育が行われていない状況下ではスイッチOTC化に反対との姿勢を取ってきた。現在解析段階にあるが、「現状のままではスイッチOTC化に反対」と回答した産婦人科医は全体のおよそ3分の2に上った。
種部恭子参考人(日本産婦人科医会)は、「条件付きでスイッチOTC化に賛成する産婦人科医の中にも温度差がある。反対と言われた先生と合意形成を図るために何が課題なのかを考える必要がある」と述べた。
一方、岩月進構成員(日本薬剤師会常務理事)は、9000人弱の薬剤師が緊急避妊薬の調剤に関する研修を修了したと報告。緊急避妊薬をスイッチOTC化した場合、3年経過するとインターネット販売も可能になるが、「薬剤師が担当しても、対面に比べると情報に制限があり、緊急性がある場合に問題がある」と述べ、対面による提供方法が望ましいとの考えを示した。
加藤聖子参考人(日本産婦人科学会理事長)も「条件付きで賛成との立場だが、要指導医薬品として販売を認めるのがいいのではないか」と述べた。現在、諸外国での販売状況について海外調査を実施しており、2022年2月に行われる次回会議で結果を公表し、論点整理を行う予定。