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重症の家族性高コレステロール血症は冠動脈、脳・下肢動脈疾患の発症リスク高-国循

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2021年09月30日 AM10:45

冠動脈疾患だけでなく脳血管・末梢血管疾患を合併する「重症FH」症例が存在

国立循環器病研究センターは9月22日、国際動脈硬化学会が策定した「重症」(=severe FH)は、冠動脈ならびに脳・下肢動脈疾患発症の高リスク群であることを報告したと発表した。この研究は、同センター心臓血管内科の舟橋紗耶華研修生、心臓血管内科部冠疾患科の片岡有医長、野口暉夫副院長、同研究所病態ゲノム医学部の堀美香客員研究員、同研究所分子病態部の斯波真理子非常勤研究員らの研究グループによるもの。研究結果は、「Journal of the American College of Cardiology Asia」に掲載されている。


画像はリリースより

家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(FH)は、顕著な高LDLコレステロール血症を特徴とする常染色体性遺伝子疾患である。FHは早発性の動脈硬化性心血管疾患を発症しうる疾患であるが、その心血管疾患発症リスクは個々の症例において大きく異なり、一部には冠動脈疾患だけでなく脳血管・末梢血管疾患を合併する重症症例も存在する。そのため、このような「真の高リスク」FHを同定し、適切な脂質管理を含めた予防治療を行うことが重要と考えられている。しかし、これまで高リスクFHを簡便に同定する方法は十分に確立されていない。

国際基準に基づく「重症FH」に該当する日本人症例を解析

近年、国際動脈硬化学会よりLDLコレステロール値やリスクファクターの集簇等を基に、高リスクFH=重症FH(=severe FH)を同定するアプローチが提唱された。しかし、このFHリスク層別化法により診断された日本人の重症FHの臨床的特徴や予後については十分に検証されていなかった。

そこで研究グループは、国立循環器病研究センターに受診あるいは入院したFH症例480例において、動脈硬化性心血管疾患発症既往を有さないヘテロ接合体FH380例を後ろ向きに解析した。重症FHは、国際動脈硬化学会の基準に沿って、「LDL-C値>400mg/dl、未加療」「LDL-C値>310mg/dl+リスク因子1つ」あるいは「LDL-C値>190mg/dl+リスク因子2つ」と定義した。リスク因子は、高血圧症、糖尿病、喫煙、早発性冠動脈疾患の家族歴、慢性腎不全、未加療年齢40歳以上、リポプロテイン(a)>50mg/dl、<40mg/dl、BMI>30kg/m2であった。

重症FH症例は非重症FHより、心臓イベント15.4倍、非心臓イベント5.9倍発生リスクが高い

対象症例の40.3%は重症FHと診断された。重症FH症例は非重症FH症例に比してLDLコレステロール値・中性脂肪値ならびに心臓病リスクを高める脂質粒子のリポプロテイン(a)が高値であり、低HDL-C血症も合併していた。さらに、アキレス腱肥厚や黄色腫の合併頻度も重症FHにおいて有意に高率であった。

観察期間7.4年間において、重症FH症例の初回心血管イベント(心臓・非心臓イベントの複合エンドポイント)発生リスクは、非重症FHに比べて7.8倍高く(95%信頼区間2.56-23.5,p値<0.001)、心臓イベント(心臓死+冠動脈疾患+冠動脈血行再建)ならびに非心臓イベント(脳梗塞+下肢閉塞性動脈硬化症)発生リスクも、非重症FHに比べ、それぞれ15.4倍、5.9倍と有意に高率であった。さらに、これらの動脈硬化性心血管疾患の再発リスクについても、重症FHは非重症FHに比べて7.9倍も高いことが明らかとなった(95%信頼区間2.97-20.9,p値<0.001)。

日本人における重症FHは、LDLコレステロール高値など顕著な脂質異常症を合併しており、動脈硬化性心血管疾患の発症・再発リスクが高率であることがわかった。「本研究結果から、日本人の重症FHを早期に診断し、適切な脂質管理療法を速やかに導入する必要性が示唆された。今後は、このような重症FHに対する最適な治療アプローチの確立も必要であり、さらなる研究を進めていく予定だ」と、研究グループは述べている。

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