乳児型ポンペ病・遅発型ポンペ病の新規標準治療となる可能性
サノフィ株式会社は9月27日、ネクスビアザイム(R)点滴静注用100mg(一般名:アバルグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え))について、「ポンペ病」の効能または効果で、製造販売承認を取得したと発表した。
ポンペ病は、ライソゾーム酵素のひとつである酸性α-グルコシダーゼ(GAA)の遺伝子の異常によりGAA活性の低下または欠損が原因で生じる疾患で、複合多糖(グリコーゲン)が全身の筋肉内に蓄積する。グリコーゲンの蓄積は、不可逆的な筋損傷を引き起こし、肺を支える横隔膜などの呼吸筋や、運動機能に必要な骨格筋に影響が及ぶ。
ネクスビアザイムは、筋細胞の中にあるライソゾームにGAAを送り届けてグリコーゲンの分解を促すことで、ポンペ病がもたらす重大な症状である呼吸機能、筋力・身体機能(運動能力など)をアルグルコシダーゼ アルファよりも改善させる目的で開発された。用法および用量は、通常、アバルグルコシダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として、遅発型の患者には1回体重1kgあたり20mgを、乳児型の患者には1回体重1kgあたり40mgを隔週点滴静脈内投与する。同社は同剤について、ポンペ病(糖原病Ⅱ型)において、乳児型ポンペ病(IOPD)および遅発型ポンペ病(LOPD)の新たな標準治療となる可能性がある、としている。
遅発型ポンペ病対象P3試験
今回の日本における申請は、2つの臨床試験で得られた肯定的な結果に基づくものだった。まず、ピボタル第3相二重盲検比較試験のCOMET試験では、遅発型ポンペ病の患者を対象としてネクスビアザイムの安全性と有効性を、標準治療薬のマイオザイム(R)(アルグルコシダーゼ アルファ)との比較で検討した。
同試験の結果、ネクスビアザイムにより、アルグルコシダーゼ アルファに比べ、第49週時点における努力肺活量(%FVC)が2.4ポイント改善し、主要評価項目である非劣性が示された(p=0.0074; 95%CI, -0.13, 4.99)。
また、6分間歩行試験において、ネクスビアザイム群は、アルグルコシダーゼ アルファ群に比べ、歩行距離を30メートル延長した(95% CI, 1.33, 58.69)。
49週間にわたる実薬対照二重盲検試験の期間中に重篤な副作用が現れた患者は、ネクスビアザイム群で1名(2%)、アルグルコシダーゼ アルファ群で3名(6%)。ネクスビアザイム群に高頻度(>5%)で認められた副作用は、頭痛、そう痒(かゆみ)、悪心、じんましんと疲労だった。
注入に伴う反応は、ネクスビアザイム群で13名(26%)、アルグルコシダーゼ アルファ群で16名(33%)認められた。ネクスビアザイム群のうち複数の患者で認められた注入に伴う反応はいずれも軽度~中等度で、頭痛、下痢、そう痒、じんましんや発疹など。重度の注入に伴う反応は認められなかったとしている。
アルグルコシダーゼ アルファ投与経験あり乳児型ポンペ病対象P2試験
続いて、第2相Mini-COMET試験では、アルグルコシダーゼ アルファによる治療で十分な効果が得られなかったか効果の減弱が見られた年齢18歳未満の乳児型ポンペ病患者を対象に、ネクスビアザイム(R)の安全性を主に評価するとともに、探索的に有効性の評価を行った。
その結果、試験中に高頻度で報告された有害事象はいずれも軽度か中等度で、嘔吐(6名)、発熱(6名)、上気道感染(5名)、咳嗽(4名)と発疹(4名)など。重篤または重度の治療と関連する有害事象は認められなかった。投与中止や死亡に至った有害事象は認められなかったとしている。
6か月時点では、アルグルコシダーゼ アルファの治療時に悪化または効果不良がみられた患者において、有効性の評価項目である粗大運動能力尺度-88、簡易運動機能検査、ポンペPaediatric Evaluation of Disability Inventory、左室心筋重量のZスコアおよび眼瞼の位置に改善または安定化が見られたとしている。
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・サノフィ株式会社 プレスリリース