国立がん研究センターがんゲノム情報管理センター(C-CAT)は10月4日から、保険診療で行われた癌遺伝子パネル検査の結果から得られた遺伝子変化等の情報を研究開発に利活用できる「利活用検索ポータル」の運用を始める。創薬や新規治療法の開発加速を狙いとしており、治療に使用された薬剤名や治療効果等も検索可能。一部の医療機関とアカデミアは無料で、製薬企業は年間780万円で利用できる。
複数の癌関連遺伝子の変異を一度に検査できる遺伝子パネル検査は2019年から保険適用されている。C-CATでは、全国の癌ゲノム医療中核拠点病院等で行われた同検査の結果データを集積しており、現時点で2万0875人分の検査データ、診療情報を保有している。
一方、検査結果に基づいて治療薬が投与された患者数は607人にとどまり、治療薬が届く割合を高めるにはデータの利活用促進が重要と判断。そのため、集積したデータを患者・家族から同意を得た上で、医療機関、アカデミア、製薬企業等の研究開発に提供することとした。
利活用検索ポータルでは、癌種、遺伝子変化、治療に使用された薬剤名、治療効果や有害事象を検索でき、検索結果を学術研究、医薬品開発等に利用することが可能になる。
中核拠点病院などの医療機関、公的研究費が適用される研究を行うアカデミアの年間利用料は無料だが、企業の利用には780万円が必要となる。既に、製薬企業から5件以上、アカデミアから10件以上の問い合わせがあるという。
年6回程度審査を行って使用が目的に合致しているかなどを確認するほか、得られたデータを第三者に提供することを禁じている。
ポータルの開始により、日本人に適した癌治療薬の臨床試験や創薬、癌の新規診断・治療法の開発が促進されることが期待できるとした。
間野博行C-CATセンター長は27日に記者会見し、「皆保険制度で行われるパネル検査のデータを全て集めているので、網羅性が飛び抜けて優れている。今後も集積が加速するので、世界最大の癌ゲノムデータベースになる日もそう遠くはないと思う」とした。