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小児ミトコンドリア心筋症、世界初の大規模調査結果を公表-千葉県こども病院ほか

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2021年09月28日 AM11:15

223症例について原因遺伝子、臨床的特徴、長期生命予後を調査

千葉県こども病院は9月27日、小児ミトコンドリア病223例の遺伝的基盤および心筋症の詳細な病型を含む臨床的特徴、長期生命予後を明らかにする研究を実施した結果、全体の 22%に認めた心筋症は生命予後が悪く、特に新生児発症・染色体構造異常を伴う左室肥大は生命予後が極めて悪いことがわかったと発表した。この研究は、千葉県こども病院の松永綾子主任医長、同遺伝診療センター・代謝科の村山圭部長(センター長)、順天堂大学・難治性疾患診断治療学の岡﨑敦子准教授、埼玉医科大学小児科/ゲノム医療科の大竹明教授、北海道大学小児科の武田充人講師、順天堂大学・難病の診断と治療研究センターの岡﨑康司教授(センター長)らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Cardiology」10月号に掲載される。


画像はリリースより

ミトコンドリア病の一病型であるミトコンドリア心筋症は、ミトコンドリアの構造、機能に関わる遺伝子の異常によって生じる心筋症。小児ミトコンドリア病の20~40%に合併するとされている。心臓の表現型では肥大型心筋症が最も多く、他に拡張型心筋症や左室緻密化障害、さらに学校検診における心電図異常としてWolff-Parkinson-While(WPW)症候群、高度房室ブロックなどを認める例も存在する。

研究グループは、2007年からミトコンドリア病に関する共同研究を進めている。ミトコンドリア心筋症に関しては、2016年にミトコンドリアDNA上のATP合成に関わる点変異が重篤な小児ミトコンドリア心筋症の原因遺伝子となることを世界で初めて証明し、同研究で同定した変異は小児ミトコンドリア心筋症の原因遺伝子として、ミトコンドリア病の原因遺伝子に関する世界的データベース「MITOMAP」に登録された。さらに2019年にはミトコンドリア心筋症35症例の原因遺伝子と生命予後を明らかにし報告した。

今回、研究グループは、2004年から2019年までの長期間にわたり、小児ミトコンドリア病223 症例について原因遺伝子を同定し、全症例において心筋症の詳細病型を含む臨床的特徴、長期生命予後を調査した。遺伝的基盤および詳細な臨床情報を223症例という大規模データで明らかにした研究は世界でも過去最大規模となるものだ。

過半数が核遺伝子異常、2割が心筋症、うち8割が肥大型心筋症

小児ミトコンドリア病223症例の原因遺伝子の内訳は、114症例が核遺伝子異常、89症例がミトコンドリアDNA点変異、11症例がミトコンドリアDNA大欠失、9症例が染色体構造異常だった。

小児ミトコンドリア病223症例のうち、心筋症は全体の22%である46症例に認められた。46症例のミトコンドリア心筋症の原因遺伝子は、25症例が核遺伝子異常、14症例がミトコンドリアDNA点変異、1症例がミトコンドリアDNA大欠失、6症例が染色体構造異常だった。心筋症の内訳は、約80%が肥大型心筋症で、その他、拡張型心筋症や左室緻密化障害も認められた。

心筋症は死亡リスク高、左室肥大、新生児発症、染色体構造異常がリスク因子

中央値36週(12~77週)のフォローアップ期間中に、全体の38%である85症例が死亡。心筋症症例の死亡率は、心筋症を有さない症例と比較して有意に高い結果となった。多変量解析の結果、左室肥大(ハザード比4.6)、新生児発症(ハザード比2.9)、染色体構造異常(ハザード比2.9)が全死亡に対する独立したリスク因子だった。左室肥大を認める患者のうち新生児発症/染色体構造異常を合併する21症例の死亡率は100%であり、新生児発症/染色体構造異常を合併しない14症例の死亡率(71%)より高い結果となった。

今回の報告は、世界で初めてミトコンドリア心筋症の遺伝的基盤、臨床的特徴と長期予後に関する大規模データをまとめたもの。同研究の成果は、ミトコンドリア病の中で頻度が高いにも関わらずこれまで診断がつかない例もあった小児ミトコンドリア心筋症を正確かつ迅速に診療する際に正確な情報源として臨床現場において活用されることが期待される。研究グループは、「ミトコンドリア心筋症の新たな病態解明と病因遺伝子に基づく治療開発、さらに心臓移植に関するエビデンス構築や日本で展開されている創薬研究などにも貢献できることを期待する」と、述べている。

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