遠隔転移を有する腎臓がんは予後不良、確立された治療法がない
富山大学は9月21日、再発リスクの高い腎臓がん患者に対し、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブによる術後補助療法を検討した臨床試験(KEYNOTE-564)の中間解析の結果、無病生存期間や全生存期間を有意に延長する効果があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大学術研究部(医学系)腎泌尿器科学講座の北村寛教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The New England Journal of Medicine」に掲載されている。
画像はリリースより
遠隔転移を有する腎臓がんの予後は不良である。組織学的悪性度が高い大きな腫瘍や、腎静脈あるいは下大静脈への浸潤がある腫瘍、腎臓周囲への浸潤がある腫瘍、所属リンパ節転移への転移がある腫瘍などは、がんを手術で取り切れても、遠隔転移をきたしがんで亡くなるリスクが高いことが知られている。しかし、このようながんに対して手術再発や転移のリスクを下げる術後補助療法は、確立したものはない。
24か月時点の無病生存割合、ペムブロリズマブ群77.3%、プラセボ群68.1%
同試験の対象は、淡明細胞型腎がんで腎摘除術または腎部分切除術後の再発リスクが高く、全身治療を受けたことがない患者。ペムブロリズマブを3週おきに200mg、最長で17サイクルまで投与する群(ペムブロリズマブ群)と、プラセボを投与する群(プラセボ群)に無作為に割り付けた。主要評価項目は無病生存期間で、副次評価項目は全生存期間、安全性などであった。
994人がペムブロリズマブ群(496人)とプラセボ群(498人)に割り付けられた。無作為化からの観察期間中央値24.1か月での解析結果において、24か月時点での無病生存割合は、ペムブロリズマブ群77.3%、プラセボ群68.1%であり、ペムブロリズマブ投与が無病生存期間の延長に寄与していることが示された。また、24か月時点での全生存割合はペムブロリズマブ群96.6%、プラセボ群93.5%であった。グレード3以上の有害事象は、ペムブロリズマブ群の32.4%、プラセボ群の17.7%で認められたが、ペムブロリズマブに起因する死亡例はなかった。
「今回の発表は中間解析の結果によるもので、今後長期データを解析、公表する予定がある。本臨床試験の結果に基づき、ペムブロリズマブが術後補助療法として保険診療にて使用可能となることが期待される」と、研究グループは述べている。
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