知的能力に重度の障害を持たない3~8歳の日本人ASD児113人を対象に
金沢大学は9月21日、自閉スペクトラム症(ASD)を持つ児童たちの心理検査・知能検査のデータを解析し、3~8歳の知的能力に重度な遅れのない、自閉スペクトラム症を持つ児童において共同注意というコミュニケーション能力の異常が大きいほど、知能が低くなることを報告した。この研究は、同大附属病院神経科精神科の佐野滋彦助教、医薬保健研究域医学系精神行動科学の菊知充教授、子どものこころの発達研究センターらの研究グループによるもの。研究成果は、「Autism Research」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
ASDを持つ児童において、共同注意という脳機能の異常と知能に関連があると、過去の海外の研究で示されていた。共同注意とは、ヒトにおいて生後半年からみられる、他者とコミュニケーションするための能力の一つ。子どもが自分の気になるものを指さして、母親にも見てもらおうとするなどの行動で表される。ASDを持つ児童では、こうした行動の出現する年齢が遅い、出現する頻度が小さいなどの異常が見られる。
しかし、過去の研究の対象は知的能力に重度の障害を持つ児童が中心となっており、共同注意の異常と知能の関連が、ASDを持つ児童すべてにおいてみられるものかどうかは不明だった。そこで今回研究グループは、知的能力に重度の障害を持たない児童を対象に、共同注意の異常と知能の関連を調査した。
今回は、ASDを持ち、知的能力に重度の障害を持たない3~8歳の日本人児童113人を対象にADOSという心理検査で評価される共同注意の異常と、K-ABCという知能検査で評価される知能の関連を統計解析で評価した。
共同注意異常が大きいほど知的能力が低く、統計学的に有意な関連
評価の結果、これらの児童において、共同注意の異常が大きいほど知的能力が低くなり、両者の間に統計学的に有意な関連があることが判明。これは過去の海外の研究と一致する結果であり、ASDを持つ児童において、知的能力障害の有無と無関係に、共同注意の異常と知能が関連すると判明した。
今回の研究により、ASDを持つ児童全般において、共同注意を改善する治療を行うことで知能をも高めることができ、将来の学校や社会における適応を改善していける可能性があると示唆される。
今後は、介入研究を行い、共同注意を改善することで実際に知能が高まるのかどうか検証していく必要がある、と研究グループは述べている。
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