■日薬学術大会で討議
19、20日にウェブ上で開かれた日本薬剤師会学術大会の分科会で、安定確保医薬品や医薬品供給不足発生時対応スキームの制度化を求める声が相次いだ。「最も優先して取組を行う安定確保医薬品」(カテゴリA)に分類される21成分については、通常の医薬品取引とは別枠とし、製薬企業、卸、病院、薬局間で共同管理するなどの案が示された。薬価の優遇措置新設を求める意見もあった。
原薬への異物混入や、承認内容と異なる製造に対する業務停止処分などの影響で医療用医薬品の自主回収や出荷調整が相次ぎ、病院や薬局で必要な医薬品を十分に入手できない事態になっている。
こうした背景から今年3月には、医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議での討議をもとに安定確保医薬品リストが策定された。「最も優先して取組を行う安定確保医薬品」(カテゴリA)21成分など、全506成分を3段階に分類したもので、5月には厚生労働省から、医療用医薬品供給不足発生時の製薬企業、製薬団体、行政の行動手順を一覧表にした対応スキームが示された。
日本薬剤師会の安部好弘副会長は、「対応スキームができたのはいいが、それが現下の供給不足の調整や改善に活用できたのか、課題が残る」と指摘。対応スキームには法的強制力はなく任意の取り組みとなるため、「法制化の検討も必要ではないか」と投げかけた。
薬価についても、実勢価格に基づき経時的に価格が下がる仕組みとは別枠にするなど、「安定確保医薬品の薬価のあり方も検討する必要がある」と語った。
このほか、医療現場では医薬品の在庫を確保するために早め、多めに発注するようになり、それが在庫不足に拍車をかけている側面もあるとし、「医療機関や薬局の購買動向や在庫のあり方も検討しなければならない」と話した。
一方、日本製薬団体連合会品質委員会の大久保恒夫委員長は、「安定供給のためであっても、同一成分薬や同種同効薬を増産するなど企業間で供給量の調整を行うことや、流通末端における各社製品の納入先や納入量の調整を行うことは、独占禁止法遵守の観点から難しい」と述べ、理解を求めた。
医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会座長の三村優美子氏(青山学院大学名誉教授)も「安定確保医薬品の法制化や制度化、共通のルールが必要ではないか」と言及。
公正取引や独禁法の違反を避けるため、「原則は単品単価契約だが、カテゴリAの安定確保医薬品はこうした通常の取引活動から外し別枠の対応にする。製薬企業、卸、病院、薬局間で共同の管理下に置くのがいいのではないか」と私見を提示した。
カテゴリBとCの安定確保医薬品については、必要に応じて過剰発注や在庫偏在をチェックできるルールを導入することや、供給リスク情報を共有化する案を示した。
医薬品卸の立場からバイタルネットの一條武社長は、自社で取り扱う医療用医薬品のうち8月末時点での出荷調整対象は、428成分(全体の19.8%)、2053品目(14.6%)、5885アイテム(15.3%)に達していると報告。小林化工や日医工への業務停止命令等で「出荷調整アイテム数はこの数カ月で2.6倍に急増した」と強調した。
現在、MS業務の半分以上を、出荷調整に関する薬局への代替薬の手配や紹介、処方元への薬剤変更依頼が占めているという。「MSが価格交渉や販促活動、情報提供活動に割く時間は大幅に減少している」と現況を語った。