2020年までの4年間で新たに消化器がんと診断された患者対象に調査
横浜市立大学は9月22日、消化器がんの新規診断に関して新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行前と流行期での変化を調べた結果、胃がん、大腸がん、特に早期胃がんと早期大腸がんの診断数が有意に減少し、大腸がんに関しては進行したステージで発見される例が増加したことを日本で初めて報告したと発表した。この研究は、同大医学部医学科肝胆膵消化器病学の日暮琢磨講師、中島淳教授、同大大学院医学研究科の葛生健人氏(現:横浜医療センター消化器内科医師)らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」に掲載されている。
画像はリリースより
COVID-19によるロックダウンや医療崩壊によりがんの新規診断数が著しく低下していることが海外で明らかになり、その影響で今後がんによって亡くなる人が増加するという予測が報告された。そこで研究グループは、日本にけるCOVID-19の流行が消化器がんに及ぼした影響を明らかにするために調査を実施した。
対象は、横浜市立大学附属病院と国立病院機構横浜医療センターの2病院において2017年から2020年までの4年間で新たに消化器がん(食道がん、胃がん、大腸がん、膵がん、肝臓がん、胆道がん)と診断された全患者5,167人。診断時ステージを、日本において本格的にCOVID-19の流行が始まった2020年3月以降を「流行期」として、流行前の期間と比較した。
早期ステージの胃がん/大腸がん診断数は減少の一方、大腸がんステージⅢは増加
新規がんの診断数は、胃がん26.9%、大腸がん13.5%と有意に減少していた。また、ステージ別に比較すると、胃がんのステージⅠは35.5%、大腸がんのステージ0は32.9%、ステージⅠは34.0%、ステージⅡは35.3%と有意な減少が認められた。その一方、大腸がんのステージⅢは68.4%の有意な増加を認めた。その他の膵臓がん、食道がん、肝臓がん、胆道がんに関しては有意な変化は認めなかった。
「再診患者数」は流行前後で有意な減少は認めず、「初診者数」は有意に減少
日本においては諸外国とは異なり、ロックダウンは行われず、緊急事態宣言が発出され、自粛要請という形で感染対策が行われた。また医療体制は一部地域を除いてCOVID-19の流行下においても医療制限は行われなかった。実際に今回の研究においても「再診患者数」は流行前後で有意な減少は認めなかった。しかし、「初診者数」は有意に減少しており、受診制限は行われなかったものの、無症状・軽症状の患者が受診を控えた結果、初診者数が減少したと考えられた。
しかし、胃がんや大腸がんは早期では症状が出ないことがほとんどであり、自粛による受診控えにより早期胃がん、早期大腸がんの診断数が減少した可能性がある。また近年増加傾向にあり、患者数の多い大腸がんに関しては、大腸カメラの施行時期の遅れにより進行したステージで発見される例が増加した可能性もある。がんの発生率はCOVID-19前後でも大きな変化はないと考えられるが、診断数が減少していることより、今後も進行がんで発見されるケースが増える可能性がある。
「適切なタイミングでの病院受診、胃カメラ検査、大腸カメラ検査などの検診を延期しないで、がんの早期発見の重要性を呼びかけることも大切。2021年もまだCOVID-19の流行が続いており、引き続きがんの診断数や診断時のステージを注視しながら、患者への啓発も進めていきたいと考えている」と、研究グループは述べている。
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・横浜市立大学 プレスリリース