病院前脳卒中予測モデルへの機械学習の導入は世界初
兵庫医科大学は9月10日、病院前脳卒中病型判別システム「JUST Score」に機械学習を導入し、最新の地域データをリアルタイムに反映させること(AI化)が可能なモデル「JUST-Machine Leaning」の開発に成功し、「脳卒中の発症から治療までの時間短縮効果の実証」を実現したと発表した。この研究は、同大脳神経外科学講座の吉村紳一主任教授 、臨床疫学講座の森本剛教授らの研究グループによるもの。これら2つの研究成果は、「Translational Stroke Research」電子版と「Journal of NeuroInterventional Surgery」電子版にそれぞれ掲載されている。
画像はリリースより
研究グループは2018年7月にJUST Scoreを開発。これ以外にも、脳卒中の可能性を病院搬送前に予測する病院前脳卒中予測モデルについては、世界中で広く研究されている。しかし、研究内容は「脳卒中の診断が正しいか否か」までで、「病院前脳卒中病型判別システムに機械学習を導入すること」と「救急現場で使用した際の病院との交渉回数や搬送時間、患者の予後を解析すること」は、同研究が世界初の試みとなる。
JUST Scoreの使用で救急隊の搬送依頼交渉回数が減少、重症脳卒中患者の治療までの時間短縮
JUST Scoreは、脳卒中の疑いがある患者に対しては、同システムを利用しなかった時と比べ、早い段階で治療施設へ搬送できるようになった。しかし、過去の同大の研究データを元に脳卒中の予測モデルを作成する必要があり、さまざまな地域の特性や時代背景の変化への対応が遅れる可能性があった。しかし今回、機械学習を導入することで、最新の地域データをリアルタイムに反映させること(AI化)が可能となるモデル「JUST-Machine Leaning」の開発に成功した。
さらに、JUST Scoreを導入した救急搬送現場と患者への影響をより適切に評価するため、まだ導入できていない広域の救急隊にもJUST Scoreを導入し、救急隊員が脳卒中を疑った患者の搬送結果や、搬送後の治療結果についての評価を実施。JUST Scoreの使用前後を分析した結果、救急隊が「搬送を依頼する交渉回数」が減少し、「重症脳卒中患者の治療までの時間」が短くなる効果が証明された。
早期発見による「予後の改善」にも期待
今回の研究により、JUST Scoreの精度が高まり、「実際の臨床現場において治療を行うまでの時間短縮効果」が証明された。今後、救急隊や脳卒中疑いの患者を最初に評価する医療従事者が、より広くJUST Scoreを利用することで、脳卒中患者が早期に適切な治療を受けられる可能性が高くなり、より多くの患者の予後の改善が期待できる。研究グループは、引き続き、JUST Scoreの最適化を目指した研究を継続し、より多くの患者を救うことにつなげたい、と述べている。
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