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前眼部OCTAで緑内障における「線維柱帯切開術」の効果予測に成功、世界初-京大

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2021年09月10日 AM11:30

術前の前眼部OCTA画像は、MIGSの術後成績と関連するか?

京都大学は9月9日、線維柱切開術眼内法を施行したデータを解析し、術前の前眼部OCTアンギオグラフィー深層血流画像の血管密度が低いほど手術成功となることが多く、また、高い眼圧下降率が得られることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科眼科学の赤木忠道准教授(研究当時、現:新潟大学准教授)、岡本洋子同博士課程学生、辻川明孝同教授を中心とした研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

緑内障における眼圧上昇の原因は主に、房水流出の障害だ。房水主流出路(経シュレム管房水流出路)では、房水は前房から線維柱帯を通り、シュレム管から集合管、強膜内および強膜上静脈叢または房水静脈を経て、強膜上静脈に排出される。線維柱帯が流出抵抗の主座であるとされているが、シュレム管以降の流出抵抗も房水流出に影響すると考えられている。房水流出路の従来のイメージング方法として、前房内に造影剤を注入する房水造影などが報告されているが、非生理的環境下であることに加え、検査を術中に行う必要のある侵襲的な方法であり、患者に負担がかかるため日常診療で施行することは困難だった。

緑内障手術には濾過手術と流出路再建術があり、濾過手術は眼圧下降効果に優れているが、手術侵襲が大きく、術後合併症も多いことがデメリットだ。流出路再建術は、眼圧下降効果は濾過手術に比べ弱いが、近年は低侵襲で合併症が少なく安全性の高いMIGS(minimally invasive glaucoma surgery)が広く普及している。しかし、MIGSは、一部の症例では十分な眼圧下降効果が得られないことがあり、その原因の一つとしてシュレム管以降の房水流出抵抗が考えられている。

OCTアンギオグラフィー()は、移動する赤血球によるOCT信号の位相変化を検出することで生理的条件下に短時間で血流を画像化できる患者への負担が少ない非侵襲的な検査だ。研究グループは以前、前眼部OCTAによって得られる深層画像が、シュレム管以降の房水流出路が描出できることを報告している。今回は、前眼部OCTA血流画像がシュレム管以降の房水流出路を反映していることを考慮し、術前の前眼部OCTA画像がMIGSの手術効果に関連するかについて、前向きに検討した。

術前の前眼部OCTA深層血流画像の血管密度が低いほど手術成功率・眼圧下降率ともに高く

研究グループは、京都大学附属病院眼科でMIGS施行予定の37例37眼を対象に、術前前眼部OCTA血流画像の血管密度と術後成績との関係を計画的に調査。術前前眼部OCTA画像は主に房水流出路が含まれる深層画像と、主に結膜組織からなる表層画像に分けて解析した。

術後眼圧が18mmHg以下でかつ術後眼圧下降率20%以下を手術成功と定義したところ、手術成功群は23眼、手術不成功群は14眼だった。深層・表層画像の血管密度と手術成功の有無との関連を調べると、術後眼圧に影響し得るさまざまな因子(術前眼圧、術前緑内障点眼数、白内障手術の同時手術)で補正しても、術前の深層血管密度が低いほど手術成功となる可能性が高いことが確認された。表層画像と手術成功との有意な関連は確認されなかった。また、術前眼圧が低いほど、深層画像の血管密度のうち、特に外側(結膜円蓋部側)の領域の血管密度が低いほど、高い眼圧下降が得られることが確認された。前眼部OCTAを用いた血流画像と流出路再建術の手術成績との関連を検討したのは同研究が世界初となる。

緑内障の病態解明や流出路再建術の手術予後予測への活用目指す

今回の研究成果により、前眼部OCTAを用いた深層画像は一部の房水流出路を反映しており、線維柱帯切開術術後効果の予測に有用である可能性が示唆された。術前にMIGSが奏功することが予測できれば、従来であれば濾過手術を選択していた患者に対して、濾過手術ではなくMIGSを選択することも可能となる。また、MIGSの効果が期待できないことが予測できれば、初回から濾過手術を選択でき、再手術の回避が可能になると考えられる。これが実現すれば、緑内障を治療する上での恩恵は大きい。

研究グループは、同研究結果を解釈する上での注意点と今後の展望について以下のように述べている。「本研究に用いたOCTA撮影機器は後眼部(網膜)用に開発されたものであり、画像ノイズを最小限にする撮像条件やソフトウェアなどにおいてまだ改善の余地があること、また、検討した症例数が37眼と極少数であることが挙げられる。今後、前眼部OCTA撮影機器の改良や多数例でのさらなる検討により、緑内障の病態解明や流出路再建術の手術予後予測に活用できればと考えている」

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