2015年10月~2020年5月、魚骨異物確認の患者270例を対象に
東北大学は9月8日、東北大学病院における咽頭・食道の魚骨異物患者の調査から、その臨床的特徴を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野の香取幸夫教授、鈴木淳講師、宍戸雅悠医員らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」電子版に掲載されている。
画像はリリースより
魚の骨が口や喉に刺さる疾患を「魚骨異物」という。魚骨異物は魚消費量が多い国において一般的な疾患であり、特に、アジアでは咽頭・食道に刺さった・詰まった異物の約50~90%を占めるとされる。ありふれた疾患である一方、詳しい調査はあまり行われておらず、魚の種類によって骨の刺さり方や頻度が変わるかどうか明らかにされていなかった。
研究グループは、魚骨異物疑いで東北大学病院を受診した患者を詳しく調査。2015年10月~2020年5月までの期間に魚骨異物の疑いで受診した患者は368例であり、そのうち医師が異物を確認した270例(74.3%)を調査対象とした。
カレイ・ヒラメの骨は下咽頭や食道に刺さる頻度「高」、内視鏡下摘出などが必要になる症例が多い
調査の結果、患者の年齢は乳幼児が最も多く、0~4歳が全体の25.9%を占めた。骨が刺さっていた部分は口蓋垂から舌根にかけての中咽頭領域が87.4%と大多数を占め、特に、口蓋扁桃に刺さっている症例が多いという結果だった。
魚の種類はウナギの仲間(ウナギ34例・アナゴ3例・ハモ2例)が14.4%と最も多く、次いでサバ12.2%(33例)、サーモン12.2%(33例)、アジ11.1%(30例)、カレイの仲間11.1%(カレイ28例、ヒラメ2例)であり、ウナギを除いては家庭での生鮮魚介消費量の多い魚が主な原因だった。
魚骨異物を確認した270例のうち、12.2%(30例)で、診察中に骨が自然に脱落。残りの240例で摘出術が行われた。54.6%(131例)が口腔から直接摘出、42.9%(103例)が内視鏡下での摘出手術、2.5%(6例)が全身麻酔下の手術だった。
12歳以下の小児例は139例で、中咽頭領域に骨が刺さっていた症例が99.3%(138例)を占め、内視鏡下摘出術を要した症例は22.3%(31例)だった。さまざまな魚の種類の中で、カレイ・ヒラメの骨は、下咽頭や食道に骨が刺さる頻度が高く(30%)、自然に脱落することが少なく(9.1%)、内視鏡下摘出術や全身麻酔下での手術が必要になる症例が多い(65.5%)ことがわかった。
魚の種類によって刺さりやすい部位や摘出法に違い
今回の研究により、咽頭・食道の魚骨異物特徴が明らかとなった。魚骨異物は4歳以下の幼児で生じることが多く、内視鏡下摘出術や手術といった、患者に負担の高い治療が必要となる場合がある。
魚の種類によって刺さりやすい部位や摘出法に違いがあることが明らかとなり、同研究の成果が今後の診療に生かされることが期待される、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース