■武田が調査結果
武田薬品は1日、米モデルナ製新型コロナウイルスワクチンの一部ロットに混入していた異物がステンレススチールだったとの調査結果を公表した。製造ラインで金属部品が適切に設置されていなかったことが原因としており、製造上の不具合は使用を見合わせた3ロットに限定したものとしている。接種した場合の医療上のリスクが増大する可能性も低いとした。
異物混入問題で使用を見合わせた3ロットは、モデルナの欧州における委託生産拠点であるロビ(スペイン)が生産したもの。
モデルナが委託した独立調査機関によると、ロット番号「3004667」で確認された粒子状の異物は、製造や食品加工の際に使用されるステンレススチールと同定した。
ロビの原因調査でも、ワクチンのバイアルに栓を打ち込む機器の一つに取りつけられた二つの金属部品の設置不具合で摩擦を起こしたため混入し、同ロット番号を製造する前の製造ライン切り替え中に不適切に部品が配置されたとしている。製造上の不具合は、使用見合わせ対象の3ロットに限定されたものとした。
ワクチンの薬液内にステンレススチールが少量混入しても、接種した人の健康と安全に過度のリスクをもたらす可能性はないとし、ワクチンのリスク・ベネフィット評価に悪影響を及ぼすこともないとした。また、筋肉内に注入された場合も、注射部位以外で副反応を引き起こす可能性は低いとの見解も示した。
ロビは再発防止策として、▽全製造ラインの目視による再確認▽製造ライン切り替え時の標準業務手順書の改善▽自動目視検査実施時の適切な限度値の設定――を実施した。
武田は、接種を見合わせた3ロットについて、2日から自主回収を開始した。
一方、接種見合わせとなっているロットの一つである「3004734」を接種後に30代の男性2人が死亡した事例に関しては、「接種との因果関係の有無は確認されていない。現時点では、相互の関係なく偶発的に生じたもの」として、因果関係の有無に関する正式な調査を実施することが重要とした。
全国の大規模接種会場等で使用されているモデルナ製ワクチンをめぐっては、先月に複数の接種会場から異物混入が厚生労働省に報告された。
そのため、国内の製造販売を担う武田が、ロット番号「3004667」「3004734」「3004856」を対象に使用を見合わせるよう接種施設に求めていた。