乳幼児の睡眠と知的発達の関係を調べた研究は少なく、主観的なアンケートが多かった
金沢大学は8月25日、睡眠・覚醒制御のメカニズムが乳幼児の知的発達と関連する可能性を明らかにしたと発表した。この研究は、北海道大学病院周産母子センターの安藤明子医師、長和俊診療教授らの研究グループと、同大大学院保健科学研究院、金沢大学、金沢大学附属病院、秋田大学医学部附属病院、東邦大学医療センター大森病院、聖路加国際病院、日本赤十字社医療センター、札幌市立札幌病院らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン公開されている。
画像はリリースより
これまで、乳幼児の睡眠と知的発達の関係について調べた研究は少なく、統一した見解は得られていない。また、睡眠や発達についての評価は保護者へのアンケート調査による研究が多数だが、アンケート調査では主観的な評価になる傾向があった。
睡眠計と新版K式発達検査を用いて解析、発達過程で大脳も睡眠を制御する可能性
研究グループは、睡眠パターンの基礎が形成される1歳半の早産児101人(男児44人、女児57人)を対象に、睡眠と知的発達の関係を調べた。2013~2020年の間に出生した36週未満かつ1,500g未満の児を対象にアクチグラフ(睡眠計)を1週間継続して装着し、解析を実施。発達評価には心理士による新版K式発達検査を用いた。
その結果、起床時刻のばらつきが小さいほど発達指数が高いことが明らかになった。睡眠制御のシステムが正常に機能していると、寝起きの時刻が安定することが知られている。これまで、覚醒制御の中心は脳幹・視床下部などに存在することが知られていたが、今回の研究では「知的発達が良好な児(=大脳が成熟した児)」において「起床リズムが一定(=睡眠制御機能が成熟)である」ことから、発達過程で大脳も睡眠を制御する可能性が示唆された。
乳幼児の発達をサポートする睡眠環境の解明を目指す
今回の研究では睡眠計と新版K式発達検査を用いて、早産児を対象に乳幼児の睡眠特性と発達の関係を客観的に確認した。「今後も睡眠発達のメカニズムについて検討を続け、乳幼児の発達をサポートする睡眠環境を明らかにしたいと考えている」と、研究グループは述べている。
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