■長野県が調査結果
認定薬局制度の開始などで薬薬連携がより求められる中、長野県健康福祉部薬事管理課は8月28日にウェブ上で開かれた日本病院薬剤師会関東ブロック学術大会で、連携の実態に関する調査結果を発表した。連携に前向きな回答が薬局、病院薬剤部共に8割以上を占めた一方、病院側の1割が連携の必要性に否定的な回答が示された。薬局から病院薬剤部への情報提供様式が共通化されておらず、電話やFAXが主な方法となるなど患者の情報共有で課題が浮かび上がった。
シンポジウム「薬薬連携を中心とした多職種連携による入退院時の情報共有」で同課担当係長の大蔵直樹氏は、薬薬連携の現状を把握するため、入退院時の患者の薬物療法に関して、病院薬剤師と薬局薬剤師の情報共有、連携に関する調査結果を公表した。
調査は2020年8~9月にかけて、県内の保険薬局822軒、病院薬剤部79施設を対象に実施したもの。
保険薬局の回答を見ると、患者の一元的・継続的な薬物管理について、「地域の医療機関と円滑な連携したい」57%、「どちらかといえば連携したい」38%と、9割超が連携に前向きな考えを示した。ただ、「連携したくない」「連携できなくて良い」が各2%見られた。
患者の入院時に医療機関から情報提供の依頼を受けた経験がある薬局は53%で、依頼の頻度は「年に数回」87%、「月1回以上」9%だった。依頼の様式がある薬局は16%にとどまり、主な方法として電話やFAXが利用されていた。
退院時に医療機関から情報提供があるかについては、「ある」は47%で、情報提供の頻度は「年に数回」が80%だった。
退院時共同指導に参加した薬局は11%にとどまり、参加頻度は年に数回が60%、月1回以上は1%。
一方、病院薬剤部では、「地域薬局と連携したい」39%、「どちらかといえば連携したい」47%で計86%が肯定的に回答した。ただ、「連携できなくても良い」が10%と、薬局薬剤師を上回ったため、大蔵氏は「病院薬剤師の意識も変える必要がある」と述べた。また、病床規模が大きいほど連携に積極的だった。
患者の入院時に薬局に情報提供を依頼する病院は59%で、依頼の頻度は「年に数回」55%、「月1回以上」が43%だった。依頼しない理由では、「お薬手帳と持参薬から十分な情報を得られるため」が最多だった。依頼の様式がある病院は4%で、薬局と同様に電話やFAXが主な方法だった。
退院時の薬局への情報提供は49%が行っており、提供手段はお薬手帳が53%で最多を占めた。
調査結果を踏まえ、大蔵氏は「入退院時の病院と薬局のコミュニケーションは未だ発展途上」と結論づけ、「情報共有シート」の共通フォーマット作成、薬剤師が地域包括ケアシステムで果たすべき役割についての情報発信などによって連携を推進するよう求めた。