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原発性アルドステロン症による高血圧の新治療法が保険適用、1例目を実施予定-東北大

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2021年08月26日 AM11:30

従来は副腎の良性腫瘍を腹腔鏡手術で摘出することが唯一の根治療法

東北大学は8月24日、原発性アルドステロン症による高血圧に対する、高周波電流で原因部位を焼き切る治療法が2021年6月に保険適用され、8月30日に同大病院で第1例目の治療が行われる予定であることを発表した。この治療法の開発は、同大病院放射線診断科の高瀬圭教授らの研究グループによるものだ。


画像はリリースより

原発性アルドステロン症は、血圧を高くするホルモンの1つであるアルドステロンが副腎から過剰に分泌されることが原因で高血圧症を引き起こす疾患で、全高血圧症の10%程度を占め、日本に400万人存在するとされている。左右2つの副腎のうち、原因となる腺腫のある側の副腎を腹腔鏡手術で摘出することで、原発性アルドステロン症による高血圧を根治できるが、良性疾患に対して手術を行うことへの抵抗を感じる患者も多く、より体に優しい低侵襲な治療法が求められてきた。

また、原発性アルドステロン症による高血圧を放置すると、脳卒中、心筋梗塞、不整脈などの合併症が、普通の高血圧よりも高い確率で起こることが知られており、脳梗塞は4倍、心筋梗塞は6倍、不整脈は12倍の頻度と報告されている。しかし、同疾患の認知が十分でないことから、正しく診断されず、慣例的な投薬治療が行われている場合が少なくないことも課題となっている。

新治療法の医師主導治験で高い成功率を達成、2020年1月に薬事承認

原発性アルドステロン症の原因の多くは、片側の副腎に腺腫と呼ばれる良性の腫瘍ができ、そこからアルドステロンが多く出ていることによるものだ。アルドステロンが過剰に分泌されている部位を正確に診断するためには、副腎静脈サンプリングという脚の付け根から静脈に細い管を入れて副腎の近くの静脈から採血をして、アルドステロンがどちらの副腎からどのくらい分泌されているのかを調べる検査が必要となる。同大は、世界で最も多くこの検査による原発性アルドステロン症の診断を行っている施設の一つであり、全国から多くの同疾患の患者が同大病院腎高血圧内分泌科に紹介され、放射線診断科との協力で副腎静脈サンプリング検査を受けている。

同大病院放射線診断科では、高周波電流を流せる細い針()を刺してアルドステロンを過剰に分泌する腫瘍を焼き切る、低侵襲で患者に優しい治療法の基礎的研究を行ってきた。2012年からは東日本大震災からのアカデミアの復興を目指すためのプロジェクトである「革新的医療機器創出・開発促進事業」の国家的プロジェクトとして、オリンパスメディカルシステムズ株式会社との産学連携により、腎高血圧内分泌科との協力で医師主導治験を実施し、高い成功率を達成した。原発性アルドステロン症による高血圧の新しい治療法として、2020年1月に薬事承認され、2021年6月に初めて保険適用となった。

1、2本の針を背中側から穿刺し先端から電流を流し副腎腺腫を焼灼、副腎摘出はなし

治療は、体を腹臥位または側臥位にして、針を刺すときの位置決めのための副腎のCTを撮影してから、背中の皮膚に局所麻酔をする。疼痛軽減のために適宜鎮痛剤、鎮静剤を静脈から投与。CTで観察しながら、背中から副腎の腺腫にラジオ波焼灼用の針を1、2本刺す。再度CTで位置を確認した後に、ラジオ波で腺腫を焼灼する。焼灼中に血圧が大きく上がらないように適宜血圧を下げる薬などを点滴から入れ、腺腫が焼灼されたと医師が判断したところで焼灼を終え、針を抜いて、治療は終了となる。

手術のように副腎を切って摘出することはしないが、ホルモンを過剰に分泌している部位を焼き切ることで、アルドステロンを正常化させて疾患を根治する治療法だ。直径1.8mmの針を1、2本刺す治療のため、傷跡はほとんど残らないという。

今回の保険適用により、これまで手術を希望せずに生涯に渡って薬物療法を続けていた原発性アルドステロン症患者に対し、同治療法による根治的治療を行うことが可能となる。「さらに、放置すると重篤な合併症を起こす同疾患の認知が高まることで、早期発見、早期低侵襲治療による合併症予防を通じての社会経済的損失の低減につながることも期待される」と、研究グループは述べている。

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