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【速報】東京オリンピック関連の新型コロナ発生状況-感染研

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2021年08月24日 AM11:15

HER-SYS入力情報に基づき分析、パラリンピックの感染対策に生かす目的

国立感染症研究所は8月20日、東京オリンピック競技大会に関連した新型コロナウイルス感染症()発生状況の速報を公表した。この報告は、同研究所感染症危機管理研究センター、実地疫学研究センター、感染症疫学センターによるもの。


画像は感染研サイトより

2021年7月23日、東京オリンピック競技大会(以下オリンピック大会)が開幕した。海外選手団の入国の多くが2021年6月1日より始まり、成田国際空港では7月17日から19日に入国のピークを迎えた。一部の選手団は、各地のホストタウンや事前キャンプ地に一時的に入った後、競技開始に合わせて選手村に入村した。競技は開幕に先立ち7月21日から開始し、大会は8月8日に閉会した。既に競技を終えた選手をはじめ、多くの海外大会関係者が離日した。

・パラリンピック競技大会開催にあたり、マスギャザリング(一定期間に限られた地域において同一目的で集合した多人数の集団等と定義されることが多い)として、感染症の発生リスクの増加が見込まれることから、早期の探知と対応のため、2021年7月1日よりCOVID-19を含む6つの対象疾患において強化サーベイランスが行われた。COVID-19については、感染症法に基づき新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)へ入力された情報等に基づく、アスリート等および大会関係者を中心とする情報収集と分析がその活動内容だ。

なお、アスリート等とは、東京大会に出場する全ての選手および国際オリンピック/パラリンピック委員会(IOC/IPC)、国際競技連盟(IF)、各国オリンピック/パラリンピック委員会(NOC/NPC)に属し、アスリートと一体となって活動する者(審判、指導者(監督、コーチ)、トレーナー、練習パートナー、キャディ、スタッフ、ドクター、パラアスリート介助者等)を指す。また、大会関係者とは、主催者(IOC/IPC、NOC/NPC、IF、マーケティングパートナー及び要人)、メディア(オリンピック放送機構、放送権者、報道各社)、大会スタッフ(職員、大会ボランティア及びコントラクター)など、オリンピックID兼アクレディテーションカードまたはパラリンピックID兼アクレディテーションカードが発行される者または組織委員会が大会の準備・運営上必要不可欠な者と認める者を指す。

今回の速報は、強化サーベイランスが開始された2021年7月1日以降に報告された、オリンピック大会に関連したCOVID-19症例について振り返ることで、引き続き、8月24日より開始される東京パラリンピック競技大会(以下パラリンピック大会)における感染症対策に資する情報として国内外に還元することを目的としてまとめられ、公表された。

7/1~8/8で、計453例(アスリート等80例、大会関係者373例)

同報告では、2021年7月1日~8月8日(8月9日時点集計)にHER-SYSに登録されたオリンピック大会に関連したCOVID-19症例について記述的にまとめられた。症例定義は、2021年7月1日から8月8日までにHER-SYSに報告されたCOVID-19と診断されたアスリート等および大会関係者。アスリート等および大会関係者の分類の判断は、大会組織委員会からの情報およびHER-SYSに登録されていた情報に基づいて行われた。医師自由記載欄にこの期間の検疫と記載がある者、推定感染地域が国外の者、住民登録している住所が選手村もしくはホテルである者が海外からの渡航者とされ、国内居住者は海外からの渡航者に該当しない者で、住民登録している住所や職業を参照し、特記事項等のHER-SYS情報、検疫情報等を含めて総合的に判断された。

上記の通りまとめた結果、定義に合致したCOVID-19症例は計453例で、属性別ではアスリート等が80例(18%)、大会関係者が373例(82%)だった。居住地別では、海外からの渡航者が147例(32%)、国内居住者は306例(68%)だった。

アスリート等の95%は海外からの渡航者、大会関係者は経時的に増加

アスリート等の報告数は7月14日から増加し始め7月22日にピークとなった。アスリート等の症例では、大部分が海外からの渡航者(海外からの渡航者95%(76/80)、国内居住者5%(4/80))であり、93%(71/76)の症例が検疫時もしくは入国日から14日以内に診断されていた。残る7%(5/76)については、14日経過後に診断がなされており、特定区域(大会組織委員会が管轄もしくは提携している特定の管理区域)内での感染が発生した可能性についてさらなる調査が必要。なお、国内からの参加アスリートにおける症例の報告はなかった。

一方、国内居住者が大部分を占める大会関係者(海外からの渡航者19%(71/373)、国内居住者81%(302/373))については、7月1日以降、経時的に増加していた。届出自治体は、14都道府県であった。届出が最も多かったのは東京都(357例(79%))で、次いで千葉県(27例(6%))、埼玉県(26例(6%))の順だった。届出時点での定義に合致した死亡例の報告はなかった。

国際連携しての注意喚起と情報共有が重要

今回の結果に対する考察は、以下の通り。

海外からの渡航者が大部分であるアスリート等のCOVID-19症例の報告数については、入国ピークの3~5日後にピークとなった。パラリンピック大会の開催にあたり、検疫、ホストタウンを有する自治体、大会主催者のアスリート等における症例及び接触者への調査や隔離措置を含めた公衆衛生対応の負担は、オリンピック大会時同様に、入国のピークから3~5日後程度に向けて高くなることが予想され、対応に必要な人的、物的資源の確保と準備が必要である。

大会関係者から継続的に症例の報告があること、日本国内の感染拡大を考慮すると、競技終了に伴い自国へ帰国するアスリート等および大会関係者での接触者や、接触者として同定はされなかったが曝露を受けた者が帰国後に感染が判明あるいは自国で発病する可能性はあり、国際保健規則(IHR)等を通じた参加選手団およびその関係者への注意喚起と参加国の保健当局との情報共有と連携が重要である。特にCOVID-19への対応リソースが少なく、少数の発生でもインパクトの大きい国々への注意喚起はより重要である。

基礎疾患を有するアスリートや感染者のリスクも念頭に

東京を含めた日本国内の感染拡大をおそらく反映して、主に特定区域外で活動していると考えられる大会関係者の症例が経時的に増加を認めたことは懸念要素である。大会関係者の中には、都内で集団生活をしている者や、やむを得ず密な状態で職務にあたらなければならない者もいる。そのような感染拡大が起きやすい場や機会での感染予防対策について、パラリンピックに向けて対策の徹底が再度必要である。全国の自治体の関係機関や企業から大会の運営のため都内へ派遣されている者については、派遣元にもどった際に、潜在的に接触者であった可能性も考慮し、二週間の健康観察の徹底とともに、必要に応じて検査実施を考慮する等、派遣元での感染拡大リスク軽減に関する取り組みが望ましい。また、パラリンピック大会においては、アスリートや関係者が基礎疾患を有している場合もあると考えられ、感染時のリスクも念頭に置かねばならない。特にパラリンピックアスリートを近くでサポートするスタッフについては感染予防策の徹底が求められる。

再度、リスクに応じた管理と対策の徹底を

なお、同報告は、主にHER-SYSに報告された情報を基に、直近に控えたパラリンピック大会に向けて適時に疫学情報の還元を行い、国内外の保健衛生部局を含めた大会に関係する部門や関係機関の対策に活用されることに主眼が置かれた。解釈を行ううえでの注意点や制限は、以下の通り。

・数値については今後変更される可能性があり、また、大会組織委員会が公表している数値とは収集方法と分類方法の違いにより異なる可能性がある。例えば、組織委員会はアスリート“等”ではなく、アスリートに限定した分類で集計している。
・各属性の報告数については、それぞれの属性の母数を反映している、またスクリーニングの頻度による探知のバイアスにも影響をうけている可能性がある。感染者が多いからと言って、その属性の感染リスクが高いことを示すものではない。
・東京を含めた国内のCOVID-19の流行下で、感染の機会は必ずしも大会に関連しているとは限らず、大会と関連しない感染機会(家族、職場、大会に関連しない人が集まる場所)で曝露を受けた可能性のある症例もある。

「東京を含め全国でのCOVID-19症例数が増加する中でパラリンピック大会の実施に際しては、アスリート等に対する厳格な管理と感染予防対策はもちろん、大会スタッフを含めた大会関係者についても再度、リスクに応じた管理と対策の徹底が求められる」として、同報告は締めくくられている。

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