既存のラジオミクス法は画像診断の種類とがん腫に強く依存し、再現性は限定的だった
北海道大学は8月23日、複数の画像診断法(CT、MRI)と複数のがん種に共通する腫瘍表現型を発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院医理工学グローバルセンター(センター長:白土博樹教授)の研究グループ、同大病院の加藤扶美講師らと、米国スタンフォード大学の研究グループとの共同研究によるもの。研究成果は、「Nature Machine Intelligence」にオンライン掲載されている。
放射線学的画像診断は、がんにおける不可欠な診断法としてスクリーニング、診断、病期分類や治療反応の評価に適用されており、ラジオミクスは放射線画像から定量的な性質を抽出して臨床的効果を予測するバイオマーカーとして利用されている。しかし、現在用いられているラジオミクス法では画像診断の種類とがんの種類に強く依存しており、その再現性は限定的だ。
研究グループは今回、腫瘍の形態と空間的な不均一性を体系的に特徴付けるための新しい技術を提案することで、複数の画像診断法(CT、MRI)と複数のがんの種類に共通する腫瘍表現型を見出し、より多くの患者への適用が可能となる、新しいアプローチ法の確立を目的として研究を行った。
がんの特徴とがん治療後の予後に関係性を持つ、がんの4つのサブタイプを特定
研究グループは米国・欧州・日本のがん患者1,682人のデータを元に、がんの特徴とがん治療後の予後に関係性を持つ、がんの4つの画像サブタイプを特定。その結果、これらの画像サブタイプは、腫瘍サイズや他の臨床的要素に関わらず、分子構造の特徴と治療後の予後を、明確に反映していることが検証された。
さらに、免疫療法で治療された進行性肺がんでは、1つの画像サブタイプが生存率の改善と腫瘍浸潤リンパ球の増加に関係していることが判明。また、ディープラーニングにより、腫瘍の自動セグメンテーションと再現性のあるサブタイプの識別が可能であることが示され、実臨床への導入がより容易になったという。
従来の小さな生検のサンプリングバイアスを克服、精密医療の進展に期待
今回のような画像サブタイプを取り入れた腫瘍分類は、腫瘍全体の情報を反映するため、小さな生検のサンプリングバイアスを克服でき、非侵襲的なので、がん患者の長期的な経過観察に役立つ。また、従来の臨床的および分子的分類を補完し、今後の精密医療において、重要性が増すと期待される。
「今後も理工学分野における最新の技術を医学に応用する共同研究を進め、スタンフォード大学等との国際連携を活用して、最先端の放射線医療・がん治療に貢献していく」と、研究グループは述べている。
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・北海道大学 プレスリリース