NCGMと横浜市立大学、東京大学、虎の門病院は全国の診療実態を調べることが可能な匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース(NDB)を用いて、国内の2型糖尿病患者に最初に投与された糖尿病薬の処方実態を明らかにするための全国規模の研究を実施した。NDBデータから成人2型糖尿病患者のうち、インスリンを除いた糖尿病治療薬を単剤で開始した人を対象に調べた。
その結果、最初に投与された糖尿病薬に占める割合はDPP-4阻害薬が65.1%、BG薬が15.9%、SGLT2阻害薬が7.6%、α-グルコシダーゼ阻害薬が4.9%、スルホニル尿素(SU)薬が4.1%、チアゾリジン薬が1.6%、グリニド薬が0.7%、GLP-1受動体作動薬が0.2%となった。
14年度下半期から17年度まで年度ごとの割合はBG薬が経年的に増加、SGLT2阻害薬が著しく増加したのに対し、DPP-4阻害薬とSU薬は減少傾向を示した。都道府県別ではBG薬が最大で沖縄県の33%、最小で香川県の8.7%、DPP-4阻害薬では最大で福井県の71.9%、最小で沖縄県の47.2%と薬剤選択で地域間差が認められた。
各薬剤の選択に最も強く影響した因子は年齢で、高齢なほどBG薬、SGLT2阻害薬の処方割合は低く、DPP-4阻害薬とSU薬の処方割合が高かった。総医療費については、BG薬で治療を開始した患者が最も安く、SU薬、チアゾリジン薬が続き、GLP-1受容体作動薬が最も高いことが明らかになった。多変量解析では、BG薬はチアゾリジン薬を除くその他薬剤より総医療費が有意に低いことが示された。
NCGMは、全国規模の調査によって、▽2型糖尿病薬に対して最初に投与される糖尿病薬が欧米とは大きく異なり、DPP-4阻害薬が最も多いこと▽BG薬で治療を開始した患者の総医療費が最も安いこと▽薬剤選択に一定の地域間差や施設間差があること――が初めて明らかになったとした。
DPP-4阻害薬が選択された要因として、インスリン分泌低下の関与が大きいことや、高齢な患者ほどBG薬やSGLT2阻害薬が避けられていたことが考えられるとの見解を示した。
その上で今後、個々の患者に対するより適切な薬剤選択など診療の質の全国的な均てん化を進めるためには、薬剤選択に際し代謝異常の程度や年齢、肥満、その他の病態を考慮することについてのさらなる周知に加え、薬剤選択の一助になるフローやアルゴリズムなどの作成が有効とした。