CXCL14がCpG DNAに結合すると自然免疫誘導、その仕組みは?
東京都医学総合研究所は7月15日、ケモカインがDNAと結合して自然免疫を活性化する仕組みを解明したと発表した。この研究は、同研究所幹細胞プロジェクトの岩瀬璃奈元研修生、原孝彦参事研究員、種子島幸祐主席研究員らが、徳島大学の大高章教授らのグループと共同で行ったもの。研究成果は「Journal of Immunology」に掲載されている。
画像はリリースより
ケモカインは細胞の遊走を促進する分泌タンパク質であり、白血球を呼び寄せることで炎症反応などに寄与していることが知られている。このケモカインの一般的な機能に加えて、同研究所幹細胞プロジェクトの先行研究により、ケモカインの一種であるCXCL14がCpG DNAと呼ばれる細菌のDNAに多く含まれるDNA配列に結合し、その樹状細胞への取り込みを介して、自然免疫の誘導や炎症反応を大幅に増強するという新たな機能が発見された。しかし、この機能がケモカインに共通の機能なのか、どのようなメカニズムで取り込み増強が起こるのかは不明なままだった。
CXC型ケモカイン共通で、複合体のクラスリン依存性エンドサイトーシスが重要
今回の研究では、CXCL14と同じCXC型のケモカインであるCXCL4がCXCL14と同様の機能を持ち、CpG DNAによる樹状細胞の活性化を増強することが明らかとなった。また、CXCL14はCpG DNAと細胞表面受容体への結合ドメインの両方を持ち、CXCL14/CpG DNAの複合体が、クラスリン依存性エンドサイトーシス経路により、樹状細胞へ取り込まれることがCpG DNAの活性増強に必要であることが初めて明らかとなった。
さらに、CXCL14/CpG DNAの結合をシミュレーションにより解析した結果、CXCL14のN末端側とC末端側の複数のアミノ酸が協調的に働いて結合を安定化していることが示された。これらの結果により、CpG DNAとの結合によりケモカインが自然免疫を活性化する仕組みが、初めて分子生物学的に明らかとなった。
より効率的ながん免疫増強剤やワクチンアジュバント開発に期待
CXCL14とCpG DNAはどちらもがん免疫の増強に関連することが知られている。また、今回の研究で示したCXCL14とCpG DNAによる樹状細胞の活性化は、ワクチンの効果を高めるワクチンアジュバントとしての機能が期待される。「今回の研究成果を足がかりとして、CXCL14とCpG DNAの協調的な作用がさらに解明されれば、より効率の良いがん免疫増強剤やワクチンアジュバントの開発につながる可能性がある」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東京都医学総合研究所 TOPICS