医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医薬品・医療機器 > 遺伝子診断薬「AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」承認、標的遺伝子5つ-国がんほか

遺伝子診断薬「AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」承認、標的遺伝子5つ-国がんほか

読了時間:約 3分11秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年08月19日 AM10:45

EGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET遺伝子の診断薬として

国立がん研究センター東病院は8月17日、肺がん遺伝子スクリーニングネットワーク「」に蓄積された検体と遺伝子解析データを活用し、Amoy Diagnostics社開発の遺伝子診断薬「AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」の良好な診断性能を確認したと発表した。同研究結果に基づき、製造販売元となる株式会社理研ジェネシスが同診断薬の承認申請を行い、6月25日に肺がん治療における4つの標的遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF)の診断薬として、8月12日にはMET遺伝子の診断薬として、国内製造販売承認を取得した。


画像はリリースより

日本における死因の第1位はがんであり、その中で肺がんはがん死亡原因として最多だ。肺がん患者のうち、約3分の2が手術不能の進行がんとして発見され、抗がん剤治療や放射線治療などを受ける。近年の遺伝子解析技術の進歩により、肺がん発症の原因となる様々な遺伝子異常が相次いで発見され、これらの遺伝子異常を有する肺がんには、遺伝子異常を標的とした抗がん剤(分子標的薬)が極めて有効であることがわかってきた。

微量の検体でも、複数の遺伝子を迅速にかつ確実に診断できる検査方法が求められる

現在、EGFR、ALK、ROS1、BRAF、METといった遺伝子に異常のある肺がんには、それぞれに対する分子標的薬を初回治療として用いることが肺癌診療ガイドラインでも強く推奨されており、進行肺がんの治療開始前には、遺伝子検査によってこれらの遺伝子異常を診断することが必須となっている。

これまでの遺伝子診断法は、個々の遺伝子をひとつずつ検査する1遺伝子1検査の方法が用いられてきた。この方法で複数の遺伝子を診断するには、多くの時間と検体量が必要であるため、全ての遺伝子異常の結果を確認する前に、分子標的薬以外の通常の抗がん剤で治療を開始しなければならない状況が多くある。近年、次世代シーケンサー(NGS)を用いた遺伝子診断法が国内で承認され、複数の遺伝子を同時に診断できるようになった。

しかし、NGSを用いた遺伝子診断は、診断結果を得るまでに約2~3週間かかること、検体の量不足や質不良のため遺伝子解析が成功しない場合もある。このため、微量の検体でも、複数の遺伝子を迅速にかつ確実に診断できる検査方法が求められている。

約3,000例への前向きの遺伝子解析は検体提出~解析結果報告までの中央値3日、解析成功割合95%

LC-SCRUM-Asiaでは、2013年からの8年間で1万3,000例を超える肺がん患者の遺伝子解析を行い、さまざまな新規分子標的薬や遺伝子診断薬の開発、臨床応用に貢献してきた。2019年6月からは、東病院の松本慎吾呼吸器内科医長が中心となり、PCR法を用いた新たなマルチ遺伝子診断薬「AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」を、LC-SCRUM-Asiaにおける肺がんの遺伝子解析へ導入した。

同診断薬は、気管支鏡検査や針生検検査などで得られる肺がんの微量な検体を用いて、既存のNGSを用いた方法よりも迅速に、かつ複数の標的遺伝子を同時に診断することが可能だ。LC-SCRUM-Asiaで同診断薬の診断精度や有用性を検討するとともに、株式会社Precision Medicine Asiaからの委託研究として、LC-SCRUM-Asiaに蓄積された検体と遺伝子解析データを活用して、同診断薬の臨床性能評価を行った。

その結果、同診断薬は複数の肺がん標的遺伝子について極めて良好な診断性能を有し、臨床応用が可能であることが評された。この臨床性能評価の結果に基づき、計5遺伝子の診断薬として国内製造販売承認を取得した。

LC-SCRUM-Asiaでこれまでに約3,000例を対象に行った同診断薬による前向きの遺伝子解析では、検体を提出してから解析結果報告までの期間は中央値で3日であり、また解析成功割合は95%だったという。したがって、同診断薬を用いることで、進行肺がんの患者に有効な治療薬をより早く確実に届けることができることが期待される、としている。

残り4つの遺伝子診断性能も評価し、コンパニオン診断承認を目指す

AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネルは、今回の5つの標的遺伝子以外に、4つの標的遺伝子の解析もできるように設計されており、合計9つの遺伝子解析を短期間で行うことができる。残りの4つの遺伝子は、すでに承認されている治療薬の標的遺伝子や、臨床試験で有効性が報告されている有望な治療薬の標的遺伝子から構成されており、今後、残り4つの遺伝子の診断性能も評価し、コンパニオン診断として承認されることを目指しているという。将来的に、9つ全ての遺伝子を同時に診断して治療につなげることが可能となれば、遺伝子診断に基づく肺がんの個別化医療がますます発展していくと期待される。

今後も、LC-SCRUM-Asiaは、日本及び東アジア各国の参加施設や肺がん患者の協力のもと、大規模な遺伝子解析データや臨床データの蓄積によって、新しい遺伝子診断薬や治療薬の開発を推進し、肺がんの最適医療()の確立に挑戦していく、と述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医薬品・医療機器

  • 2025年1月より社長交代で新たな体制へ‐アレクシオンファーマ
  • ミリキズマブの炎症性腸疾患に対する長期持続的有効・安全性データを公開-リリー
  • 転移性尿路上皮がん、一次治療における新たな選択肢への期待
  • 心臓ロボット手術用の部位を見やすく展開するプレートを開発-大阪公立大
  • 新たにオンコロジー領域に注力し「2031年までに年平均成長率8%を目指す」‐GSK