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グリチルリチン誘導体、受容体PGRMC1阻害で抗がん剤効果を増強-慶大

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2021年08月12日 AM11:10

甘草の主成分グリチルリチン、多種のがん細胞に高発現のPGRMC1に結合

慶應義塾大学は7月14日、甘草の主成分グリチルリチン(GL)およびその誘導体がヘム結合性膜タンパク質PGRMC1に結合し、抗がん剤の効果を強力に高めることを発見したと発表した。この研究は、同大医学部医化学教室の加部泰明准教授、大学院医学研究科博士課程2年の小池一康氏、末松誠教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Cancers」オンライン速報版に掲載されている。


画像はリリースより

(progesterone receptor membrane associated component 1)は、多種のがん細胞に高発現しており、がん細胞の生存や増殖に重要な働きをしていると考えられている。研究グループは2016年に、PGRMC1タンパク質の構造解析に成功し、ヘムと結合して特異な2量体構造(ヘムスタッキング構造)を形成していることを明らかにした。さらに、がん増殖に関わるEGF受容体や、抗がん剤の分解に関わる酵素であるシトクロームP450に結合し、がん細胞の増殖や抗がん剤耐性に関わることを解明した。

PGRMC1はがん細胞の悪性化に重要な役割を果たすことから、新しいがん治療標的として考えられているが、PGRMC1の機能を抑制する薬剤は見つかっていなかった。今回の研究では、アフィニティナノビーズの技術を用いて、多くの漢方薬に含まれる甘草の主成分であるグリチルリチン(GL)が、PGRMC1に結合することを発見し、PGRMC1の機能を抑えることで、PGRMC1を介したがん細胞の増殖や抗がん剤耐性に対して効果を示すことを解明した。

GL誘導体、PGRMC1結合でEGFRとの会合を阻害、EGFRシグナル活性化を抑制

研究グループは、アフィニティナノビーズ技術を用いて、GLがPGRMC1に特異的に結合することを発見。核磁気共鳴法(NMR)による薬剤結合構造の解析から、GLがPGRMC1のヘム2量体化によって生じたポケット構造に選択的に結合することがわかった。

さらに、甘草から抽出されたGL誘導体のグルコグリチルリチン(GlucoGL)はGLよりも非常に高い親和性を示してPGRMC1と結合することを見出した。GL誘導体はPGRMC1と結合することにより、PGRMC1とがん増殖に必要なEGF受容体(EGFR)との会合を阻害して、EGFRのシグナルの活性化(p:リン酸化)を抑えることがわかった。

また、GL誘導体はPGRMC1と悪玉コレステロールとして知られるLDLコレステロールの取り込みに関わるLDL受容体(LDLR)との会合も阻害し、LDLの細胞取り込みも抑制した。これらの結果から、GL誘導体はPGRMC1の機能を阻害してがん細胞の増殖シグナルや栄養素の取り込みを抑制することにより、GLに比べ高い効果を発揮することが示唆された。

シスプラチン+GL誘導体併用で抗がん剤への感受性「増」、ヒト大腸がん細胞で

さらに、GL誘導体による抗がん効果を検証した結果、ヒト大腸がん細胞(HCT116細胞)において抗がん剤のシスプラチン(CDDP)とGL誘導体を併用すると、CDDPのみ投与時と比較して顕著に細胞生存率が低下して抗がん剤に対する感受性が増加していることがわかった。

また、免疫不全ヌードマウスを用いたHCT116細胞の異種皮下移植モデルにおいて、CDDPとGL誘導体を投与すると、CDDP単剤やGL誘導体単剤ではコントロール群と腫瘍の成長に大きな変化はないが、CDDPとGL誘導体を併用すると明らかに腫瘍増殖が抑制されることが観察された。

以上の結果から、GL誘導体はPGRMC1に結合することにより、PGRMC1と結合するEGF受容体およびLDL受容体の機能を阻害し、がん細胞の増殖やLDLコレステロールの取り込み量を抑制することで抗がん剤の作用を増強していることが明らかになった。

+GL誘導体併用、新規がん治療戦略の構築発展に期待

今回の研究成果は、PGRMC1が多種のがん細胞において重要な役割を果たして、GL誘導体がPGRMC1を介して強い抗腫瘍効果を有することを明らかにした。

抗がん剤とGL誘導体の併用療法は、新たながん治療戦略の構築に発展することが期待される、と研究グループは述べている。

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