臓器系全体にわたる疾患活動性を低下、OCS使用量持続的低減を示す
アストラゼネカ株式会社は8月10日、Saphnelo(一般名:アニフロルマブ(遺伝子組換え))について、標準治療を受けている中等症から重症の全身性エリテマトーデス(SLE)成人患者の治療薬として米国で承認されたと発表した。
米国食品医薬品局(FDA)による今回の承認は、2つの第3相試験であるTULIP試験と第2相試験であるMUSEを含むSaphnelo臨床開発プログラムの有効性および安全性データに基づくもの。これらの試験では、標準治療に加えてSaphnelo投与群患者は、プラセボ群に比べ、皮膚および関節を含む臓器系全体にわたる疾患活動性の低下を示すとともに、経口ステロイド剤(OCS)の使用量の持続的低減を示した。第3相TULIP-2試験の結果は2020年1月に「The New England Journal of Medicine」に掲載され、第3相TULIP-1試験の結果は2019年12月に「The Lancet Rheumatology」に掲載され、第2相MUSE試験の結果は2016年11月に「Arthritis & Rheumatology」に掲載されている。
I型IFN活動を阻害、日本ではSLEで薬事審査中
Saphneloは、I型IFN受容体のサブユニット1に結合する完全ヒト型モノクローナル抗体であり、I型IFNの活動を阻害する。IFN-alpha、IFN-beta、IFN-kappaなどのI型IFNは、SLEに関与する炎症反応経路に関係するサイトカイン。SLE成人患者の大多数に、疾患活動性と重症度との関連性があるI型IFNのシグナルの増加が見られる。
Saphneloは、SLEの適応で、EUおよび日本で薬事審査中。皮下投与を用いたSLEを対象とする第3相試験がすでに開始され、複数の新たな第3試験が、ループス腎炎、皮膚エリテマトーデスおよび筋炎を対象として計画中だ。
標準治療+Saphnelo、プラセボに対し複数の有効性評価項目で優位性示す
Saphneloに対する3つの臨床試験(TULIP-1試験、TULIP-2試験、MUSE試験)の全てが、標準治療を受けている中等症から重症のSLE患者を対象とする無作為化二重盲検プラセボ対照試験。標準治療には少なくとも、OCS、抗マラリア薬および免疫抑制薬(メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル)のいずれかが含まれた。
主要な第3相試験であるTULIP(Treatment of Uncontrolled Lupus via the Interferon Pathway)プログラムは、Saphneloの有効性と安全性をプラセボとの比較で評価したTULIP-1試験およびTULIP-2試験という2試験で構成。標準治療に加えてSaphneloまたはプラセボの投与を行い、Saphneloはプラセボに対し複数の有効性評価項目において優位性を示した。
同試験では、条件に該当する患者362例を無作為化し(1:1)、300mgのSaphnelo投与群とプラセボ投与群に分けて、4週間ごとに固定用量で静脈投与を実施。TULIP-2試験はBILAG-Based Composite Lupus Assessment(BICLA)に基づいて疾患活動性の低下を評価することにより、Saphneloの有効性を評価した。TULIP-1試験では、条件に該当する患者457例を無作為化し(1:2:2)、標準治療に加えて150mgおよび300mgのSaphnelo投与群とプラセボ投与群に分けて4週間ごとに固定用量で静脈投与を行った。同試験は、主要評価項目であるSLE Responder Index 4(SRI4)複合評価指標を達成しなかった。
第2相MUSE試験では、プラセボに対し、Saphneloの2つの用量の有効性と安全性が評価された。MUSE試験では成人305例を無作為化し、標準治療に加えて300mgまたは1,000mgのSaphnelo投与群またはプラセボ投与群に分け、4週間ごとに固定用量で静脈投与を48週間実施。同試験では、複数の有効性評価項目においてプラセボに対する改善が示された。
ループス腎炎などI型IFNが重要な役割を担う疾患へのSaphneloの可能性を探求
SLEにおいては、主要第3相試験TULIPプログラムに加えて、Saphneloの評価は長期第3相延長試験および皮下投与を用いた第3相試験が継続して評価されている。
加えて同社は、ループス腎炎、皮膚エリテマトーデスおよび筋炎を含むI型IFNが重要な役割を担うさまざまな疾患に対するSaphneloの可能性を探求しているとしている。
▼関連リンク
・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース