臨床評価部会のタスクフォースでは、被験者が医療機関に来院にしなくても臨床試験に参加できる分散化臨床試験に向け、日本での導入手引きを策定した。オンライン診療やウェアラブルデバイスの活用、自宅への治験薬配送など様々な手法が挙げられる中、訪問看護師が治験協力者として被験者宅で治験薬投与を行う訪問看護も選択肢の一つに位置づけ、導入手順や運用時の留意点を示した。
被験者は自宅にいながら、治験に必要な簡易な検査や大型機器を用いない検査、注射など侵襲を伴う薬剤投与が受けられるため、被験者や介護者の来院に伴う負担が軽減できるメリットがある。そのため、患者の同意取得率向上や被験者の離脱リスク軽減につながるとしている。
治験における訪問看護の提供方法については、対象患者や治験薬の特徴、治験実施計画書の内容、訪問看護の適切性を考慮し、訪問看護の提供方法を検討する必要性があるとした。具体的には、▽訪問看護の提供体制が整備されている医療機関を治験実施医療機関として選定する▽実施医療機関が在宅医療実施医療機関と業務委受託契約を契約する▽実施医療機関が訪問看護ステーションと業務委受託契約と締結する▽実施医療機関が治験のために、訪問看護経験を有する看護師を新規雇用する――の四つを例示した。
ただ、訪問看護の提供体制を整えている医療機関は少なく、治験実施医療機関として選定するのは難しいのが現状。現在、導入実績が多いのは訪問看護サービスを提供するサービスプロバイダーを活用した事例だ。「実施医療機関と在宅医療機関、サービスプロバイダーとの3者契約」「実施医療機関と訪問看護ステーション、サービスプロバイダーの3者契約」の二つが多いとされている。
費用面では訪問看護業務費用と、サービスプロバイダーと契約した場合には治験のマネジメント業務費用が必要になる。訪問看護業務費用は訪問時の業務内容や準備・移動も含めた看護師の拘束時間に依存するとした。
分散化臨床試験は、通常の治験と異なり対面診療ではないため、患者の安全性確保が検討課題となる。在宅医療機関の医師や看護師を治験協力者とすることで、実施医療機関の治験責任医師と連携が取りやすくなり、緊急時の安全性確認を在宅医療機関の医師が1次対応することもできる。実施医療機関の治験責任医師と治験協力者の間で、事前に責任範囲や緊急時の対応方針などを事前に明確にしておく必要があるとした。
訪問看護ステーションの訪問看護師を活用した提供方法については、安全性確認に関する教育・指導を受けた訪問看護師が通常の安全性確認を行うことはできるとした一方、緊急時の安全性確認は実施医療機関の治験責任医師が行う必要があるとの見解を示した。