P3試験で肯定的なデータが得られた5つ目の炎症性疾患に
仏サノフィ社は7月29日、中等症から重症の慢性特発性じんましん(CSU)を対象としたデュピクセント(R)(一般名:デュピルマブ)のピボタル第3相試験の24週の評価で、主要評価項目と全ての主要な副次評価項目を達成したと発表した。
CSUは、皮疹や皮下深部の浮腫が突然現れることを特徴とする慢性炎症性皮膚疾患。CSU患者は、標準治療を受けても持続するかゆみや灼熱感などの症状を経験することが多く、生活の質(QOL)が著しく低下することもある。浮腫は、主に顔面や手足に現れるが、喉や上気道に現れることもある。CSU治療には抗ヒスタミン薬が用いられるが、症状のコントロールが得られない患者は50%にのぼり、他の治療選択肢も限られている。
デュピクセントは、インターロイキン4およびインターロイキン13(IL-4およびIL-13)の経路のシグナル伝達を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体製剤で、免疫機能全般を抑制しない。 IL-4とIL-13は、アトピー性皮膚炎、喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、好酸球性食道炎に大きく関与し、CSUでも関与が考えられている2型炎症において中心となる物質だ。
今回発表されたCSUのLIBERTY CUPID臨床プログラムの試験A(2試験からなるプログラムの1件目の試験)では、生物学的製剤による治療経験のない患者に標準治療薬である抗ヒスタミン薬にデュピクセントを追加投与したところ、抗ヒスタミン薬のみ投与した患者群(プラセボ群)に比べ、そう痒と皮疹のスコアが有意に低下した。
デュピクセントの第3相試験で肯定的なデータが得られた炎症性疾患として、CSUは、アトピー性皮膚炎、喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、好酸球性食道炎(現在グローバルで開発中)に続く5つ目の疾患にあたる。
標準治療+デュピクセント群の24週時点のそう痒とじんましん活動性スコア、標準治療のみ群と比べて約2倍の低減効果
LIBERTY CUPID臨床プログラムの試験Aは、抗ヒスタミン薬では症状の改善が得られず、抗IgE薬の投与経験のない6歳以上のCSU患者138人を標準治療であるH1抗ヒスタミン薬にデュピクセントを追加投与する群と抗ヒスタミン薬のみ投与する群に割り付けて群間比較を行い、デュピクセントの有効性と安全性を評価した。
同試験の結果、標準治療の抗ヒスタミン薬にデュピクセントを追加投与した患者群は、24週時点のそう痒とじんましんの活動性スコアにおいて、標準治療だけの患者群と比べて約2倍の低減効果を示した。
そう痒重症度スケール(0~21点で評価)で評価したそう痒の重症度は、デュピクセント群で63%、標準治療(抗ヒスタミン薬)群で35%低下した(デュピクセント群:10.24点、標準治療群:6.01点低下)(p<0.001)。米国では主要評価項目(EUでは副次評価項目)として評価されたこの項目の改善は、24週まで持続した。
じんましん活動度スケール(0~42点で評価)で評価したじんましんの活動度(そう痒と皮疹の重症度)は、デュピクセント群で65%、標準治療群で37%低下した(デュピクセント群:20.53点、標準治療群:12.00点低下)(p<0.001)。EUでは主要評価項目(米国では副次評価項目)として評価されたこの項目の改善は、24週まで持続した。
試験で得られた安全性の評価結果は、すでに承認されているデュピクセントの適応疾患で確認されている安全性プロファイルと同様だった。24週間の投与期間中に治験薬投与下で発現した有害事象の発現割合は、デュピクセント群(患者の50%で発現)とプラセボ群(患者の59%で発現)で同程度だったとしている。最も高頻度で現れた有害事象は、注射部位反応(デュピクセント群11%、プラセボ群13%)。
デュピクセントのCSUと好酸球性食道炎の適応症は現在臨床開発中で、安全性および有効性の評価は現時点ではいずれの規制当局においても完了していない。
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・サノフィ株式会社 プレスリリース