精神障害を有する患者は一般住民と比べてがん検診受診率が低い
岡山大学は8月3日、かかりつけ精神科医療機関の外来で行う個別のがん検診勧奨法が、市町村によるがん検診の案内のみと比べて、統合失調症患者さんの大腸がん検診受診率を向上させることを確認したと発表した。この研究は、岡山大学病院精神科神経科の藤原雅樹助教と山田了士教授ら、国立がん研究センター島津太一室長ら、島根大学の稲垣正俊教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Acta Psychiatrica Scandinavica」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
精神障害を有する患者は一般住民と比べてがん検診受診率が低く、その格差の解消は世界的な課題となっている。日本において精神障害を有する患者は419.3万人を数えるが、現在行われている一般的ながん検診の勧奨方法では、がん検診受診率に格差が生じたままであることがわかっている。また、この格差は統合失調症患者で特に大きいことが知られている。しかしながら、統合失調症患者のがん検診受診率を向上させるための勧奨法として有効性が確認された方法はこれまでになかった。
かかりつけ精神科の個別推奨群と市町村の案内のみの群で大腸がん検診受診率を比較
今回の研究では、精神科外来へ通院中の統合失調症の患者を、通院先の外来スタッフが大腸がん検診の説明や個別に応じた受診手続きの説明・支援を実施した群(82人)と、市町村からのがん検診の案内のみを受けた群(82人)に分け、勧奨法の効果を検証する臨床試験を実施した。
市町村は11.8%、個別推奨は47.1%と有意に改善
実施した年度における大腸がん検診の受診率を比較したところ、市町村からの案内のみを受けた群は11.8%に留まったのに対して、個別の勧奨を実施した群では47.1%となり、有意に大腸がん検診を受診する人が多くなることが示された。
日本では地域住民全体のがん検診受診率も未だに低いことが問題になっている。地域住民のがん検診受診率を高めるためには、とりわけがん検診受診率の低い人々に個別に対応していく必要がある。その中でも特に、精神障害を有する患者はがん検診受診率が低く、その恩恵を受けることができずに、格差が解消されないままの状態が続いている。この格差の解消は日本に限らず、世界的な課題だ。同勧奨法の普及を進めることで、精神障害を有する患者のがん検診受診率向上(格差解消)、がんの早期発見が期待される。
藤原助教は、「日本の精神障害を有する患者のがん検診受診率を調べるところから研究をはじめて、今回、個別のがん検診勧奨法の効果を確認する研究まで進んだ。実際に患者の健康増進につながるよう、勧奨法を普及する取り組みを引き続き進めたいと思う」と、述べている。
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