不安に基づく悲観的意思決定を引き起こす脳部位の解剖学的、機能的結合関係を調査
京都大学は7月27日、悲観的意思決定の大規模脳ネットワークに関する仮説を提唱したと発表した。この研究は、同大高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(WPI-ASHBi)の雨森賢一特定拠点准教授、雨森智子同研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Neuroscience」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
不安を引き起こすメカニズムや不安感の制御がどのような脳メカニズムでなされているのかは、まだよくわかっていない。今回研究グループは、不安に基づく悲観的な意思決定を引き起こす脳部位の解剖学的、機能的結合関係を調べることで、霊長類において不安に基づく意思決定に関わる神経回路を明らかにした。さらに、他の先行研究の結果を参考にし、不安に関わる脳ネットワークの仮説を立てた。
微小電気刺激法を用いて「悲観的な意思決定に関わる脳部位の可視化」などに成功
研究では「微小電気刺激法を用い、悲観的な意思決定に因果的に関わる脳部位を同定する」「その部位にウイルストレーサーを入れて、解剖学的結合関係を明らかにする」「MRI内で微小電気刺激を行うことで、悲観的な意思決定に関わる全ての脳部位を可視化する」という3つの手法を用いた。
これにより、悲観的意思決定に因果的に関わる脳部位の神経結合関係、機能的な結合関係が明らかになった。不安に関わる脳ネットワークを明らかにした同研究成果は、不安障害などで、特定の脳回路特異的に治療をする場合に役立つと考えられるという。
ヒトでの不安障害の治療法の開発も視野に
抗不安薬を投与すると、微小電気刺激による悲観的意思決定の増加が減ることは確認されているが、霊長類が本当に不安を感じているかを完全に証明することは困難だ。「不安による意思決定の変化は、げっ歯類などのヒトから遠い動物ではそもそも調べることが難しいため、今後、ヒトでの不安障害の治療法の開発も視野に入れると、本研究のように、ヒトと相同な脳構造を持つ霊長類で研究を行う意義がある」と、研究グループは述べている。
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