急激な全身状態の悪化や死に至るケースもある、TAFRO症状を伴うiMCD
岡山大学は7月29日、TAFRO症状を伴う特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD-TAFRO)の国際診断基準を策定したと発表した。これは、同大医学部医学科非常勤講師の西村義人医師、岡山大学病院病理診断科の西村碧フィリーズ医師、学術研究院保健学域の佐藤康晴教授らの研究グループと、ペンシルバニア大学のDavid Fajgenbaum医師ら欧米の研究者との共同研究によるもの。研究成果は「American Journal of Hematology」にオンラインで公開されている。
画像はリリースより
指定難病である特発性多中心性キャッスルマン病(iMCD)は、原因不明の全身性の炎症性疾患。共通した組織像を示す疾患をまとめた概念で、現時点では均一な疾患単位ではないと考えられている。一方、TAFRO症状を呈する疾患(TAFRO症候群)は、血小板減少(Thrombocytopenia)、胸腹水の貯留(Anasarca)、発熱(Fever)、骨髄細網線維症または腎機能障害(Reticulin fibrosis or Renal insufficiency)、臓器腫大(Organomegaly)を指し、その頭文字に由来してTAFROと呼ばれている。
iMCDには、臨床的にTAFRO症状を伴うタイプ「iMCD-TAFRO」と、伴わないタイプ(iMCD-NOS)を含む、少なくとも2つのタイプがあると考えられている。iMCD-TAFROは、急激に全身状態が悪化し、死に至ることもある。TAFRO症状はiMCD-TAFRO以外にも、悪性腫瘍、膠原病、感染症などでも認められることがあり、これらの疾患との治療方針の違いなどのため、iMCD-TAFROを正確に診断する科学的根拠に基づいた診断基準が世界的に求められてきた。
新たな国際診断基準を提案、既存の患者データベースで有用性を検証
佐藤教授らの研究グループは2016年、iMCD-TAFROの診断基準を提案したが、その後、同疾患に関する新しい知見が蓄積され、世界中でたくさんの症例が新たに報告された。そこで今回、インターネット上に公開されているiMCD-TAFROに関する文献を網羅的に調査、その特徴を再検討し、新たな診断基準を提案した。
その結果、臨床所見と、特徴的な病理組織所見を組み合わせた診断基準を確立したことで、この病気を正確に診断することができるようになった。また、この診断基準は、既存の患者データベース(ACCELERATE Natural History Registry)で有用性が検証された。
同基準の普及によるiMCD-TAFROの適切な診断と治療に期待
共同研究者であるDavid Fajgenbaum医師は、自身がiMCD-TAFROを患い、なかなか診断がつかず苦しんでいた中、佐藤教授らの論文がその診断の足掛かりとなり、無事回復。キャッスルマン病の認知度向上と研究促進を目指す組織(Castleman Disease Collaboration Network;CDCN)を立ち上げ、多くの研究者と協同して活動を行っている。
「この基準が、iMCD-TAFROの診療に携わる世界各国の多くの関係者に広く普及すれば、適切な診断と治療が行われるようになり、この病気で苦しむ方々の役に立つことが期待される」と、研究グループは述べている。
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