厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会は7月30日、英アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンについて、40歳以上を対象に予防接種法上の臨時接種に使用することを了承した。海外の接種状況や国内の血栓症への対応状況等を踏まえたもの。国内の予防接種で使用可能な新型コロナウイルスワクチンは計3品目となる。
5月に特例承認されたAZ製ワクチンをめぐっては、血小板減少を伴う血栓症(TTS)が海外で報告されており、海外での使用状況や血栓症治療の周知などの対応が必要として、予防接種には使用されていなかった。
海外では、英国は基礎疾患のない40歳以上、ドイツは60歳以上など、一定以上の年齢に限定して接種を認めている。英国のTTSの報告状況を見ると、2回目接種では100万回接種当たり1.9件で、死者数は71人。10万回接種当たりの死者数は、60~70代が他の年齢層に比べて低かったことが分かった。
国内でも日本脳卒中学会と日本血栓止血学会が、同剤接種後のTTSに関する診断・治療の手引きを特例承認後に作成、公表したことから、厚労省は同剤を予防接種法上の接種に位置づけることを提案。委員からは「選択肢を増やすことは重要」との声が相次ぎ、反対意見は挙がらずに了承された。
ただ、罹患した場合のリスク、有効性と安全性、海外の接種状況を総合的に考慮し、対象年齢を原則として40歳以上とした。他のワクチンが流通停止した場合などに限定し、40歳未満でも接種可能としているが、厚労省は「極めて慎重に判断する」との姿勢を示している。
添付文書の「接種不適当者」には、予防接種を受けた後に血栓症(血栓塞栓症を含む)を発症した人および毛細血管漏出症候群の既往歴がある人を追加する。
一方、この日の分科会では、米モデルナの新型コロナウイルスワクチンの接種対象年齢を12歳以上に引き下げて使用することも了承した。
厚労省は、3日にも関連省令を改正し、同日から大規模接種会場等で対象年齢に接種可能となる見通しを示している。
同剤の接種対象者は、これまで18歳以上だったが、7月26日付で添付文書が改訂されていた。