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100歳超高齢者の便中に多い胆汁酸を特定、それを合成する腸内細菌株も同定-慶大ほか

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2021年08月02日 AM11:00

百寿者の便中で「isoalloLCA」という二次胆汁酸が顕著に増えていた

慶應義塾大学は7月30日、百寿者の便中には、isoalloLCA(イソアロリトコール酸)という胆汁酸が特異的に多いことを見出し、その胆汁酸を合成できる腸内細菌株を同定したと発表した。この研究は、同大医学部微生物学・免疫学教室の本田賢也教授(理化学研究所生命医科学研究センター消化管恒常性研究チーム チームリーダー兼任)を中心とする共同研究グループによるもの。研究成果は、「Nature」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

長生きの秘訣を探るため、研究グループは国内の百寿者(平均107歳)から便サンプルを採取し、腸内細菌叢と代謝物の解析を行った。その結果、若齢者(20~50歳)と高齢者(80~90歳)に比べ、(100歳以上)の腸管では、さまざまな菌種(Alistipes, Parabacteroides, Bacteroides, Clostridium, Methanobrevibacter等)が増加していること、そしてRuminococcus gnavusやEggerthella lenta等の菌種が、若齢者と百寿者で共通して多いことがわかった。

胆汁酸の代謝に関わる細菌の遺伝子群が百寿者で増加していることから、便中の胆汁酸を解析したところ、腸内細菌によって代謝されるisoalloLCAという二次胆汁酸が顕著に増えていることを見出した。しかし、isoalloLCAを合成する腸内細菌や合成経路はこれまで報告されていなかった。

細菌株のOdoribacteraceaeが効果的にisoalloLCAを合成

そこで研究グループは今回、百寿者で特異的に多いisoalloLCAを合成する細菌株の同定、細菌による胆汁酸の合成経路の解明、さらにはisoalloLCAがどのような働きがあるのかを明らかにするため、研究を行った。

まず、百寿者から単離した腸内細菌株と、反応経路のスタートとなる胆汁酸化合物を加えて代謝反応を確かめたところ、Parabacteroides merdae、Odoribacter laneus、Odoribacteraceaeという細菌株が効果的にisoalloLCAを合成することを発見した。単離した腸内細菌株の全ゲノム情報を解読し遺伝子配列を確認したところ、上記のisoalloLCAを合成する細菌株は、共通してヒト5アルファ還元酵素(5α-reductase, 5AR)に相同性をもつ酵素を保有していることが判明。さらに、5AR遺伝子に隣接して胆汁酸代謝に関与すると考えられる3βHSDH(3ベータ水酸化ステロイド脱水素酵素)遺伝子も存在することがわかった。そこで、百寿者から単離されたParabacteroides merdae株において、5AR、3βHSDHそれぞれの遺伝子を欠損させたところ、isoalloLCAへの生合成が見られなくなることが明らかになった。また、無菌マウスにOdoribacteraceaeを投与すると、生体内においてもisoalloLCAを合成できることを見出した。

百寿者の腸内ではisoalloLCA合成細菌が多く、グラム陽性病原性細菌の排除促進の可能性

また、胆汁酸は病原性細菌の増殖抑制作用をもつことが報告されていたことから、isoalloLCAに同様の作用があるのかを検証したところ、極めて低濃度でグラム陽性病原性細菌の増殖を抑制することを発見した。クロストリディオイデス・ディフィシルというグラム陽性病原体細菌は、近年国内でも院内感染が問題となっている。この細菌を感染させたマウスにisoalloLCAを産生するOdoribacteraceaeを経口投与すると、腸管内に定着したOdoribacteraceaeによるisoalloLCAの増加に伴い、クロストリディオイデス・ディフィシルが排除されることがわかった。

以上のことから、百寿者の腸内ではisoalloLCAを合成する細菌が増加し、isoalloLCAが豊富に存在しているためグラム陽性病原性細菌の排除が促進され、健康な腸内環境を維持できているのではないかと考えられた。百寿者から単離されたisoalloLCAを合成する腸内細菌株は、難治性感染症に対する新たな予防・治療に応用できる可能性もある、と研究グループは述べている。

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