薬事・食品衛生審議会血液事業部会安全技術調査会は27日、新型コロナウイルスの罹患歴がある人の献血の採血制限期間として、症状消失後4週間とする案を了承した。現在は一律に制限しているが、後遺症の有無に関する問診の追加実施等を条件に緩和する。適用時期について、厚生労働省は「可能な限り速やかに行いたい」としている。
■後遺症有無の問診条件
新型コロナウイルス罹患歴がある人の採血については、安全性確保の観点から、2003年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した際の厚労省通知に基づき、症状から完全に回復した場合でも採血を行わないこととしている。ただ、採血を実施する日本赤十字社は6月、海外では一律に採血を制限していないこと、献血を希望する人の不満などを考慮し、一律に制限しないよう見直すことを提案した。
具体的には、治療や通院が求められる後遺症がない人のうち、症状の消失後4週間が経過した人の献血を受け入れるべきとしていた。
罹患歴がある人では、呼吸苦、倦怠感、嗅覚障害等の後遺症が見られる一方、国内における知見が乏しいため、濱口功委員(国立感染症研究所血液・安全性研究部長)の厚生労働科学研究班が知見をさらに収集した上で、見解を整理。厚労省は、この日の調査会で研究班の見解に基づく採血基準案を示した。
詳細を見ると、厚労省の「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」が示す退院職場復帰基準を踏まえ、症状消失から2週間の採血制限期間を設けると共に、献血者の安全性を考慮してさらに2週間追加した計4週間の採血制限期間を設けるべきとした。
また、発症後4カ月以降も比較的重度の後遺症が1割程度の人に見られることなどから、献血に不適切と考えられる後遺症の有無の問診、動脈血酸素飽和度を測定するなどの健康診断を追加実施すべきとした。委員から反対する声はなく、了承された。
厚労省は、日赤と都道府県にこれら内容を通知として発出する考えだが、現行の問診票から変更する日赤の作業負担等を考慮し、発出時期は「可能な限り速やかに行いたい」としている。