子ども約10万人対象エコチル調査データより、生まれた月、気象条件とアトピー性皮膚炎発症率の関連を調査
山梨大学は7月14日、子ども約10万人を対象とした「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを解析し、子どもの生まれた月とアトピー性皮膚炎発症率との関係を調査した結果を発表した。この研究は、同大エコチル調査甲信ユニットセンターの研究グループ(社会医学講座の横道洋司准教授ら)によるもの。研究成果は、「BMJ Open」に掲載されている。
画像はリリースより
アトピー性皮膚炎は代表的なアレルギー性疾患で、10~20%の子どもが発症していると推計されている。アトピー性皮膚炎のリスクファクターには、大きく分けて遺伝要因と環境要因がある。遺伝要因には両親のアレルギー性疾患があり、環境要因には気象条件、かゆみを引き起こすもの、皮膚に広がる細菌の種類、心理的ストレス、生まれた月が挙げられる。北半球の国では、秋または冬生まれがリスクファクターだとされている。
例えば、日本では秋生まれにアトピー性皮膚炎が多いという研究があるが、調べた子どもの数は少なく、特定の地域のデータに偏っている。また、乾燥した肌とかゆみがアトピー性皮膚炎の増悪因子とされているが、これらの因子を引き起こす要因として気象条件を調べた研究はこれまでほとんどない。
今回の研究は、全国のエコチル調査に参加している約10万人の子どもを対象に、生まれた月、気象条件とアトピー性皮膚炎発症率の関連を調べる目的で実施された。
発症率は4~6月生まれで低く、日照時間・湿度は発症に大きく関わらない
まず、生まれてから3歳までに実施した質問票調査データを基に、各年齢でアトピー性皮膚炎と医師に言われたかについて調査。気象庁が公開している、全国の気象台・アメダスで観測した日照時間と湿度データを使用し、出生した都道府県の県庁所在地の生後6か月までの平均日照時間と平均湿度を、その子どもが生後まもなくさらされていた気象条件と定義し、日照時間が長い群と短い群、湿度が高い群と低い群に分け、アトピー性皮膚炎の発症率との関連を調べた。
また、生まれ月、日照時間、湿度、両親のアレルギー性疾患の既往がどれだけ子どものアトピー性皮膚炎発症の確率を高める誘因となっているかについても解析した。
分析の結果、10~12月生まれの子どもで最もアトピー性皮膚炎発症率が高く、4~6月生まれの子どもで最も低いことがわかった。一方で、日照時間、湿度はアトピー性皮膚炎の発症に大きく関わることはなかったという。
検討した遺伝・環境要因のなかでは、母親のアレルギー性疾患の既往が子どものアトピー性皮膚炎のリスクファクターとして最も大きく、母親にアレルギー性疾患の既往がない場合に比べて、発症率が1.69倍だった。
次いで、10~12月生まれであることは、4~6月生まれであることに比べて発症率が1.20倍。父親のアレルギー性疾患の既往は1.18倍だった。これらの数字は、すべて統計学的に有意だったという。
大規模データを使った本研究から、生まれ月のなかで10~12月生まれが、最もアトピー性皮膚炎発症率が高いことがわかった。しかし、それは日照時間や湿度のせいだとは考えられなかった。また、生後半年までのアトピー性皮膚炎発症の多寡は、3歳まで継続していることもわかった。
病院の診療録に基づく調査ではなく、今後も調査を
研究グループは、今回の研究の限界について、病院の診療録に基づく調査ではなく、保護者に「医師から子どもがアトピー性皮膚炎と言われたか」を記入してもらった調査であることだとしている。
また、今回の研究により、アトピー性皮膚炎が10~12月生まれに多く、4~6月生まれに少ない傾向がわかった一方で、日照時間や湿度の影響ではないことも明らかになった。アトピー性皮膚炎の誘因として皮膚バリア機能の低下、かゆみがある。これらにつながる環境因子を、他のデータで調べる必要がある、と研究グループは述べている。
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・山梨大学 プレスリリース