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【IASR速報】ワクチン接種後に新型コロナ感染症例の積極的疫学調査報告-感染研

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2021年07月26日 AM11:15

目的は、・ワクチンの変異株選択可能性・接種後クラスターの探知

(感染研)は7月21日、新型コロナワクチン接種後に新型コロナウイルス感染症と診断された症例に関する積極的疫学調査報告を、病原微生物検出情報(IASR)の速報として発表した。

感染研では、感染症法第15条第2項の規定に基づいた積極的疫学調査として、新型コロナワクチン接種後に新型コロナウイルス感染症と検査診断された症例(ワクチン接種後感染症例)に関する調査を行っている。同調査の目的は主に、1)ワクチン接種後感染の実態把握、2)ワクチンにより選択された(可能性のある)変異株の検出、3)ワクチン接種後感染者間でのクラスターの探知、の3点。今回の報告は、同調査の2021年6月30日時点における疫学的・ウイルス学的特徴の暫定的なまとめとして発表された。なお、同調査および報告では、ワクチン接種後感染の発生割合やワクチンの有効性については評価されていない。また、今回の報告は、迅速な情報共有を目的とした資料であり、内容や見解は知見の更新によって変わる可能性がある。

感染研に直接報告の症例+2回目接種後14日以上経過のHER-SYS登録感染者が対象

2021年4月1日~6月30日までに(1)医療機関・自治体からワクチン接種後感染として感染研に直接報告があった症例、および、(2)新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム(HER-SYS)に登録のあった、ワクチンの2回目接種日を0日として最初に検査陽性検体が採取された日まで14日以上経過していた感染者で、感染研から医療機関・自治体への問い合わせで協力が得られた症例について、患者・疫学情報や検体が収集された。

症例情報については同調査独自の症例報告書様式を作成し収集。感染研に送付された気道検体は、N2領域のPCR再検での陽性例について、N501Y変異(B.1.1.7系統(アルファ株)・B.1.351系統(ベータ株)・P.1系統(ガンマ株)等で認める)、E484K変異(B.1.351系統(ベータ株)・P.1系統(ガンマ株)・R.1系統等で認める)、L452R変異(B.1.617.2系統(デルタ株)等で認める)を検出するPCRスクリーニング(変異検出PCR)およびウイルス分離試験が実施され、検体中のウイルスN2領域のPCRの結果、ウイルスRNA量が十分量あると判断された検体については、ウイルスゲノム解析が実施された。なお、一般に、部分的に免疫が付与されると考えられる1回目接種後14日〜2回目接種後13日まで、免疫の付与が完了したと考えられる2回目接種後14日以降について分けて解析が行われた。ただし、現状では、これら2群の比較は、これらの集団の違い(医療従事者および高齢者の割合、接種時期、感染時期等)から、比較して解釈すべきものではない。

計130例、ほとんどが無症状か軽症、新規変異は認められず

解析の結果、27都道府県から130例(うち2回目接種後14日以降67例)が報告された。その基本特性は、年齢中央値(範囲)44.5(20~98)歳、男性37例(28.5%)、女性93例(71.5%)だった。免疫不全のある者((狭義の)免疫不全の診断を受けた者)はいなかったが、ステロイド等の免疫抑制剤の使用歴は3例(2.4%(データ欠損7例除く))で認められた。武田/モデルナ社製ワクチンの製造販売承認は5月21日で、ファイザー社製の2月14日より遅かったこともあり、接種していたワクチンは、121例(97.6%(データ欠損6例除く))がファイザー社製だった。症例報告書提出時点での重症度は、65例(50%)が無症状、60例(46.2%)が軽症、5例(3.8%)が中等症だった。重症例はいなかった。

6月30日現在、気道検体については101例(うち2回目接種後14日以降50例)収集され、N2領域のPCR再検で68例が陽性となり、Ct値の中央値(範囲)は29.4(15.9-38.4)だった。ウイルス分離可能だったのは分離を試行した58例中16例だった。変異検出PCRは68例で実施され、ウイルスゲノム解析が完了したのは39例だった。B.1.1.7系統(アルファ株)30例、R.1系統4例、B.1.617.2系統(デルタ株)4例、P.1系統(ガンマ株)1例が認められた。また、各系統特異的なスパイクタンパク質の変異を除いては、免疫を逃避する可能性のあるスパイクタンパク質への新規の変異は認められなかった。

なお、今回の調査には、複数の制限がある。まず、同調査に組み入れられたのは、HER-SYS上のワクチン接種後感染例で感染研より問い合わせた症例の一部およびHER-SYSにワクチン接種歴の入力はないが自治体および医療機関から報告のあった症例であり、国内のワクチン接種後感染の一部であり、観察期間は限られている。次に、残余検体や検体中のウイルスRNA量の制限から変異検出PCRおよびウイルスゲノム解析においてウイルス系統が確定したものは報告例の一部だ。ただし、これらの多くはクラスターではなく独立して発生したワクチン接種後感染だった。また、各症例の詳細な感染時期や地域におけるベースラインのウイルス系統の検出状況は同報告では考慮されておらず、ウイルス系統の地域的および時間的なバイアスがありうる。

男女比1:3、一部の気道検体中には感染性のあるウイルスが存在

今回の報告では、国内におけるワクチン接種後感染の積極的疫学調査の第1報として、疫学的特徴および感染したウイルスの変異検出PCR、ウイルスゲノム解析結果が示された。同調査ではワクチンによる重症化抑制効果は評価できないが、現時点で報告のあった症例の大多数が優先接種対象である医療従事者であり、若年層が多く、無症状でも検査対象となる機会が比較的多いことなどもあり、多くが軽症および無症状だった。男女比は、内閣官房HPに公開されているワクチン接種記録システムの集計値において4月12日~4月25日の2週間で(医療従事者が想定される)65歳未満の男女比は1:3程度であり、今回の報告の男女比と同程度だった。また、免疫不全や免疫抑制剤を使用している者は1割未満だった。

さらに、一部の気道検体中には感染性のあるウイルスが存在していた。また、変異検出PCRおよびウイルスゲノム解析では、ワクチン接種後に感染したウイルスはおおむね感染時に国内や当該地域おいて流行しているウイルスの系統と一致する結果となった。高齢者における接種も開始されていることから今後は重症例の知見も収集していくことが重要であると考察された。

ワクチン接種者における感染防止対策の継続は重要

中間解析の時点では、疫学的特徴としては医療従事者が大多数であったこと以外は、特殊な疫学的特徴をもつ集団ではないことが示唆された。ワクチン1回目接種後のみならず2回目接種後14日以降においても、一部の症例では感染性のあるウイルスが気道検体中に検出されたことから、二次感染リスクも否定できないことがわかった。また、ワクチン接種後感染者から検出されるウイルスは、ワクチン接種により付与された免疫を回避できる新規の変異を有するウイルスではなく、同時期に国内各地域で流行しているウイルスだった。これらの結果より、ワクチン接種後であっても、その時点で流行しているウイルスが感染することがあること、および、ワクチン接種後感染例の一部では二次感染しうることが示唆され、ワクチン接種者における感染防止対策の継続は重要と考察された。

また、今後については、ワクチン接種後であっても、新型コロナウイルス感染の疑いがある場合(有症状・接触者等)は積極的に検査を実施し、陽性検体の一部については、免疫逃避能を有する新たな変異ウイルスの出現の監視など、病原体解析を継続して実施していく必要があると考察された。なお、今回の報告は、海外における臨床試験や複数の観察研究で示されている、日本において承認されている新型コロナワクチンの高い有効性を否定するものではなく、今後ワクチンの効果に関するエビデンスを蓄積することが重要であるという。

同報告の最後には、同調査に協力をした多くの自治体や医療機関に謝辞が述べられている。

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