皮膚の老化現象、幹細胞との関係は?
藤田医科大学は7月14日、加齢に伴い産出されるタンパク質「グレムリン2」(GREM2)が、皮膚の幹細胞の分化を抑制し皮膚組織の再生を妨げていることを突き止め、GREM2の量が多いほど皮膚の老化が進行していることが明らかになったと発表した。この研究は、同大応用細胞再生医学講座の赤松浩彦教授、皮膚科学講座の杉浦一充教授、日本メナード化粧品株式会社との共同研究によるもの。研究成果は、「Regenerative Therapy」に掲載されている。
画像はリリースより
皮膚は、外側から表皮、真皮、皮下脂肪と大きく分けて3つの組織から構成されている。それぞれの組織には幹細胞が存在し、幹細胞から新しい細胞が供給されることで、皮膚組織の機能が維持されている。しかし、皮膚は老化によって機能低下し、シワ、タルミといった外観的な変化が現れる。共同研究グループは、この皮膚の老化現象と幹細胞との関係について研究を進めてきた。
加齢に伴い皮膚のGREM2の産生量が増加
研究ではまず、若齢者(8~31歳、16人)と高齢者(63~79歳、21人)の皮膚組織を解析。表皮、真皮ともにGREM2が産生されていることを確認した。GREM2は加齢によって産生量が増加していることもわかった。
三次元培養表皮モデルの技術を応用し、培養時にGREM2を添加し、表皮組織構造に及ぼす影響について検証した。その結果、GREM2を添加した三次元培養表皮では、角質層の薄い、未熟な表皮が形成された。実際にGREM2の添加濃度依存的に表皮分化マーカータンパク質(ケラチン10)の遺伝子発現が抑えられていることがわかった。このことから、GREM2には表皮幹細胞の分化を抑制する作用があり、GREM2の量が多いほど薄く未熟な表皮構造になることが考えられた。
同様に、真皮に対するGREM2の作用を検証するために、GREM2を培養液中に添加して真皮幹細胞の分化に及ぼす作用について確認した。その結果、GREM2を添加した条件ではコラーゲン線維が産生されず、GREM2の添加濃度依存的に真皮分化マーカータンパク質(タイプ1コラーゲン)の遺伝子発現が抑えられていた。このことから、GREM2には真皮幹細胞の分化を抑制する作用があり、GREM2の量が多いほど新しいコラーゲンの産生が滞ることが考えられた。
GREM2量が多い皮膚で表皮が薄くなり、真皮のコラーゲン線維が減少
高齢者の皮膚において、GREM2の量が多いものと少ないもので皮膚組織の状態の違いについて比較した。その結果、GREM2量が多い皮膚では、表皮が薄くなり、真皮のコラーゲン線維が減少していることがわかった。つまり、皮膚におけるGREM2の量が多いほど老化が進行していることが明らかになった。
これらの結果からGREM2は、皮膚の幹細胞の分化を抑制することで、表皮ではターンオーバーを、真皮ではコラーゲンの産生を遅延させ、皮膚組織全体の老化を促進していると考えられた。
「皮膚の再生や老化改善において、GREM2の産生量を減らすことは重要であると考えられる。今後は、これらの研究結果をもとに皮膚の抗老化や再生能力の向上につながる技術開発を進めていく」と、研究グループは述べている。
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