シックハウス症候群の「リスク要因」を明らかに
千葉大学は7月15日、住宅購入時の選択や生活スタイル等の改善で、シックハウス症候群を予防できる可能性が示唆されたと発表した。この研究は、同大予防医学センターの鈴木規道准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Building and Environment」に掲載されている。
画像はリリースより
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、家で過ごす時間が増えてきた。室内には多くの汚染物質があり、それらを吸い込んだりすることで起こる「鼻のムズムズ・鼻水」「頭痛」「のどの乾燥」「目のチカチカ」など、さまざまな健康障害の総称を「シックハウス症候群」という。症状の重さや頻度は人によって異なり、外気に触れることで症状が緩和することもあるため、そのまま過ごしてしまうケースが多くあり、アレルギー疾患増悪との関連を示す報告もされている。
研究グループは今回、時代や社会環境の変化により、住環境や生活スタイルが大きく変わってきている中で、改めてそれらの変化に合わせたリスク要因に関する調査を行う必要があると考えた。
「女性」や「カーペット敷きの部屋に居住」など、複数のリスク要因判明
研究では、シックハウス症候群予防に向け、発生に関連する個人の要因や生活スタイルを調べ、予防改善策の提案を行うことを目的とした。全国の20〜70歳の男性3,238人、女性1,758人、計4,996人を対象にウェブサイトを使用した質問調査を実施し、ロジスティック回帰分析を用いて算出した。
その結果、シックハウス症候群を経験しやすい4つの要因が示唆された。1)女性や、若い人(60代と比べた場合、特に20代)、2)アレルギー既往歴がある人や、神経性が敏感な人、3)喫煙歴がある人や、室内での喫煙、受動喫煙・副流煙を吸い込んでいる人、4)床がカーペット敷き、ホコリを目にする部屋に居住している人。
性別や年齢、疾患歴、神経性過敏、化学物質を低減した住宅仕様、ホコリの有無、喫煙歴、室内の喫煙などの影響を考慮しても、カーペットありの場合は、なしの場合に比べてシックハウス症候群を経験するリスクが約1.48倍増える可能性があることがわかった。さらに、ぜんそくの疾患歴がある人は、年齢や性別などの影響を考慮しても、ない人に比べて約1.41倍、シックハウス症候群を経験しているということが判明した。これらの結果から、極力、化学物質にさらされないようにすることや、生活スタイルの改善が重要であることがわかった。特に、小さな子どもは症状を訴えられない可能性もあり、原因にさらされないよう、周囲の大人が気を付ける必要があるとしている。
引き続き、室内環境とシックハウス症候群に関する分析を実施する予定
予防策として、症状を経験したことがある人は、その家族も含め、「室内での喫煙を行わない」「カーペットの使用を控える」「化学物質を低減した住宅の仕様を選択する」「室内でのホコリを目にしないような適切な掃除を行う」など、生活スタイルや住宅購入時の選択で、シックハウス症候群を予防できる可能性が示唆された。
研究グループは、今後も継続的に調査を実施し、対象者の一部を追跡予定だという。「温度、湿度、揮発性有機化合物、ダスト等の環境データの取得も検討しており、本研究で用いた質問調査と合わせ、室内環境とシックハウス症候群に関する分析を実施する予定だ」と、述べている。
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・千葉大学 ニュースリリース