■日病薬調査
病院薬剤部における非薬剤師の活用が注目を集める中、薬剤助手を採用している病院の割合は約8割に達することが、日本病院薬剤師会学術第5小委員会が実施した実態調査で明らかになった。一方、非薬剤師に調剤業務を実施させる場合に必要な要件として、厚生労働省が求めている業務手順書を整備していた施設は約5割、研修を実施していた施設は約3割にとどまり、薬剤助手の本格活用に向けた体制整備はまだ十分ではないことが分かった。こうした現状を受け学術第5小委員会は今後、研修モデルや研修マニュアル案の作成に取り組む計画だ。
調査は、日病薬の会員施設を対象に2020年12月から2021年1月末に実施。307施設から有効回答があり、施設の種別は一般病院181施設、特定機能病院20施設、療養型病院21施設、精神科病院24施設、その他の病院61施設だった。
回答施設のうち薬剤助手を採用していたのは244施設(79.5%)で、薬剤助手の採用率には病院種別により大きな差はなかった。採用人数の中央値は特定機能病院で7人と最も多く、その他の施設では2人となっていた。
薬剤助手の業務内容は、薬剤部門内の事務作業が最も多く、200施設以上で実施していた。続いて、各種医薬品の在庫管理や発注業務を150施設以上で実施。これらに次いで多かった業務内容は、▽集計表等に基づく注射剤の準備▽処方箋に基づいて錠剤等を集める業務▽一包化や散剤分包準備など調剤補助業務▽注射処方箋に基づく注射剤の準備▽集計表等に基づいて錠剤等を集める業務――などだった。
厚労省が2019年に発出した通知「調剤業務のあり方について」では、医薬品の取り揃えなどの調剤業務を非薬剤師に実施させる場合には、業務手順書を整備したり研修を実施したりするよう求めているが、調査で業務手順書があると回答した病院の割合は54.5%にとどまっていた。
また、薬剤助手を採用している病院のうち、研修を実施している割合は31.1%と低かった。研修実施病院でも、従来の研修内容では十分ではないと考えている施設が多かった。
将来の見通しについて聞いたところ、今後薬剤助手の採用が増えると予想した施設の割合は、特定機能病院では80%以上を占めたが、一般病院では40%以上、療養型病院や精神科病院では30%以下にとどまり、現状維持と予想する施設の割合が高かった。
日病薬フューチャーファーマシストフォーラムで調査結果を発表した学術第5小委員会委員長の志田敏宏氏(山形大学病院薬剤部)は「手順書を整備している施設は5割程度、研修を行っている施設は3割程度で、薬剤助手の体制が十分に整っているとは言えない状況が明らかになった」と語った。
一方、「体制が整えば薬剤助手へのタスクシフトが進むと考えられる」とし、学術第5小委員会として研修モデルや研修マニュアル案の作成に取り組む考えを示した。