回答を病院立地別に解析すると、医療資源の少ない地域や過疎地域、不採算地区に立地する病院(109施設)では、募集しても1人も確保できなかった病院は54.1%、募集人数の一部しか確保できなかった病院は14.7%と合計で約7割になり、平均値より高かった。募集人数を全て確保できた病院は31.2%だけで、地域偏在が認められた。
一方、都市部に分類される病院(99施設)でも、募集人数を全て確保できた病院は48.5%と半数にとどまっており、都市部でも薬剤師を十分に確保できていないことが分かった。
病床規模別では、規模が小さい病院ほど薬剤師の確保に苦労していた。募集しても1人も確保できなかった病院の割合は、99床以下の病院では54.8%、100床台の病院では63.3%に達していた。
回答があった全病院で採用できた人数の合計値を、募集人数の合計値で割った常勤薬剤師の採用率は55.3%。17年度の調査では61.7%だったが、18年度には59.3%に低下した。19年度はさらに4.0ポイント下がっており、薬剤師の確保は年々困難になっていることが明らかになった。
病棟薬剤業務との相関を解析した結果、募集しても1人も確保できなかった病院の割合は、病棟薬剤業務実施病院では28.6%だったが、同業務を実施していない病院では60.9%に達し、薬剤師不足が病棟薬剤業務の実施に影響している可能性が示された。
室井氏は「常勤薬剤師の採用率には地域偏在が認められた」とし、「地方の病院ほど採用が困難な状況だった」と言及。病棟薬剤業務などの進展を薬剤師不足が阻んでいるとし、「その解決が喫緊の課題」と投げかけた。
一方、同フォーラムで講演した荒木隆一氏(市立敦賀病院医療支援部長)は、14年から開始した薬学生への修学資金貸与制度の成果を報告。薬剤師6人の採用につながり、今も4人が勤務を続けていると紹介した。
この制度は、同院に就職し一定期間勤務すれば、貸与した修学資金の返済を不要とするもの。段階的に制度を発展させて、2020年7月からは、1年生の時から月に5万円か10万円の貸与を受けられるようになった。
荒木氏は「地方出身の薬学生には有効な方法。1年生から利用可能な制度とすることで、高校生へのアプローチが可能となった」と振り返った。
金田昌之氏(菊名記念病院薬剤部長)は、「中小規模の病院を志望する学生は存在し、中小病院でも薬剤師を募集しているが、情報不足のためにマッチングできないのではないか」と問題を提起した。
日病薬や各都道府県病院薬剤師会は求人情報サイトを設けているが、「現状では登録施設数が少なく、網羅的ではない」と指摘。「登録施設数が増加し、学生にとって使いやすければ有用なものになる」と期待を語った。