日本人成人発症の小麦アレルギーのほとんどはWDEIA
理化学研究所(理研)は7月10日、食物アレルギーの特殊なタイプである小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)の患者を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)により、WDEIAの発症リスクが、特定のHLA型である「HLA-DPB1*02:01:02」と関連することを発見したと発表した。この研究は、理研生命医科学研究センターファーマコゲノミクス研究チームの莚田泰誠チームリーダー、福永航也研究員、島根大学医学部の森田栄伸教授、千貫祐子准教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「The American Journal of Human Genetics」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
小麦アレルギーは、うどんなどの小麦製品が原因となって、じんましん、下痢、腹痛、呼吸困難などの症状が生じる食物アレルギー。小麦に対して必ず、しかも摂取してから数分以内に反応するものを即時型小麦アレルギーといい、乳幼児における小麦アレルギーの大部分は、このタイプに分類される。
一方、小麦の摂取だけでは反応せず、摂取後の運動やアスピリンの服用などの二次的要因が加わることによりアレルギー症状を示す「小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)」が見られることがあり、重篤な場合は、アナフィラキシーショックを起こす。成人における小麦アレルギーの発症頻度は日本人で0.21%と報告されているが、そのほとんどはWDEIAであると考えられている。
WDEIA患者は有意に高頻度にHLA-DPB1*02:01:02を保有、オッズ比4.13
今回、共同研究グループは、日本人WDEIA患者77人に対し、日本人集団924人を対照群として、GWASを行い、一塩基多型(SNP)の網羅的な解析を実施。その結果、ヒトゲノム全体をカバーする約390万か所のSNPの中で、rs9277630というSNPがゲノムワイド有意水準を超えるP値(P < 5×10-8)を示したことから、WDEIAの発症に関わる有力な疾患関連SNPであると考えられた。
続いて研究グループは、別の日本人WDEIA患者91人を追加して検証。最終的には、両者の結果をメタ解析で統合することにより、WDEIA患者のうち122例(73%)が「HLA-DPB1*02:01:02」というHLA型を保有しており、日本人集団における保有率39%と比較して、統計的に有意に高頻度であることを突き止めた(P = 1.06×10-14)。また、ある事象(病気など)の起こりやすさの比較尺度であるオッズ比は、4.13と非常に高い値を示した。これにより、HLA-DPB1*02:01:02はWDEIAの発症に密接に関連することが明らかになった。
発症予測バイオマーカーとしての活用に期待
今回の研究結果から、HLA-DPB1*02:01:02を保有する人は、保有しない人に比べてWDEIAを発症するリスクが高いことが示された。「HLA-DPB1*02:01:02はWDEIAの発症リスクを予測するバイオマーカーとして、将来的には遺伝子検査に活用されることが期待できる」と、研究グループは述べている。
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・理化学研究所 研究成果