電解水透析による患者の疲労感軽減の機序は?
聖路加国際病院は7月8日、慢性維持透析患者に電解水透析を行い、透析関連疲労への影響とその機序に関して調査し、論文掲載されたことを発表した。この研究は、同病院腎センター長・腎臓内科(兼:東北大学病院慢性腎臓病透析治療共同研究部門客員教授)の中山昌明部長、医療法人社団朋進会の薩田英久氏、高口直明氏、柴田和彦氏の研究グループによるもの。研究成果は、「Renal Replacement Therapy」に掲載されている。
画像はリリースより
日本の血液透析療法は世界でもトップクラスの成績を誇っている。しかし、透析患者はQOL低下や合併症発症のリスクが高く、その改善が望まれている。電解水透析は抗酸化性が確認されている水素(H2)を含む透析液で行う血液透析療法だ。そのためQOL改善の効果が期待されている。電解水透析を長期に行うと疲労感が軽減することが、これまでの観察研究でわかっていた。それを踏まえ今回は、短期間で透析疲労感が軽減するのか、またその機序を明らかにすることを目的に研究が行われた。
2週間目に疲労感が有意に低下、血液透析中のMDA-a上昇の軽減も確認
朋進会洋光台セントラルクリニックで通常透析から電解水透析に変更された63人の外来慢性維持透析患者に対して、変更2週間前、変更直前、変更2週間後、4週間後、6週間後、8週間後に疲労感に関するアンケート調査を行った。また、保存されていた血液を用いて血中酸化ストレスマーカー、抗酸化マーカー等を測定した。
その結果、電解水透析を行うと、透析日に疲労感のある患者の主観的疲労感が2週間経過時には有意に低下していた。またそのメカニズムとして、電解水透析により、血液透析中の血中酸化ストレスマーカーであるマロンジアルデヒド-タンパク質付加体(MDA-a)の上昇を軽減し、抗酸化マーカー(TRX)の減少を抑制したことを明らかにした。さらに、統計解析(多重ロジスティック回帰分析)により、透析日の通常透析患者の透析疲労感は、血液透析中の酸化ストレス上昇が独立して寄与していることが明らかとなった。
標準治療としての確立と普及に期待
これまでの研究から、電解水透析は総死亡および心血管合併症の複合発生リスクを41%低減することを論文で報告している。「今回、透析疲労感を比較的早く軽減できることとその機序を明らかにしたことで、科学的裏付けをより強固にできたことから、今後、標準治療としての確立と普及が期待される」と、研究グループは述べている。
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・聖路加国際病院 プレスリリース