内閣府は、2020年度に策定された「バイオ戦略2020」に沿って30年に世界最先端のバイオエコノミー社会を実現するという目標を達成するために、様々な施策を実施。その一環として、企業やアカデミア等が連携して研究開発から事業化までを一貫して推進するバイオコミュニティの形成に取り組んでいる。
地域バイオコミュニティとしては先月、北海道、鶴岡、長岡、福岡の4カ所が認定された。関東と関西の2カ所に設置予定のグローバルバイオコミュニティは2022年3月末までに認定される見通しだ。この動きを背景に、関西の受け皿として任意団体を立ち上げることで関係者が合意。正式認定を見据え、先行して活動を開始することになった。
15日に発足する「バイオコミュニティ関西」には全体の運営などを担う委員会を設置。委員長には澤田拓子氏(塩野義製薬副社長)、副委員長には諸富隆一氏(阪急阪神不動産社長)と塩野義出身の坂田恒昭氏(大阪大学共創機構特任教授)が就任する。
委員は約30人で構成。関西経済連合会、関西経済同友会のほか各商工会議所、関西医薬品協会、大阪大学や京都大学、各自治体、理化学研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所、国立循環器病研究センターなど産学官の関係者が名を連ねる。
当面は関係者の手弁当で運営するため専任スタッフは置かず、事務局機能は、近畿バイオインダストリー振興会議と都市活力研究所のスタッフが兼任で受け持つ予定だ。
関係者の内諾を得ている基本方針や基本計画に沿って今後、活動を本格化させる。主軸となるのが、具体的なテーマを設定し産学官で連携する分科会活動。約30年後を見据えた社会課題を抽出し、各分科会のリーダーが旗振り役となって賛同する企業やアカデミアなどを募集。コンソーシアムを形成し、非競争領域でオープンイノベーションを推進する。内閣府の認定を得た団体として、投資や公的資金を呼び込み、活動に必要な費用を賄いたい考えだ。
分科会は、ヘルスケアや持続的一次生産システム、環境・エネルギーなど幅広い分野で立ち上げる。現時点で具体化している分科会は八つ。その一つとなるメンタルヘルス分科会では、うつや認知症などの予防を目的に、塩野義がリーダー機関となって、心のヘルスケアを定量的に測定する基準作りに取り組む。
そのほか、デジタルバイオヘルス分科会(リーダー機関:国立循環器病研究センター研究所)、ビッグデータヘルスケア分科会(リーダー機関:バイオグリッド関西)などを設置する。
副委員長兼統括コーディネーターに就任予定の坂田氏は「アカデミアを主体に連携する枠組みは存在するが、企業が社会課題を解決するために意思表示し、大きな組織体を利用して業種を超え、オープンイノベーションに取り組める枠組みはこれまであまりなかったのではないか」と話す。
今後、分科会活動に加えて、世界に向けて関西の研究開発力を発信したり、地域バイオコミュニティと連携したりして、取り組みを活性化する。25年の大阪・関西万博で成果の一部を示し、それをステップにして活動をさらに発展させる道筋を描いている。