新型コロナワクチン普及後、マスクの必要性は?
北海道大学は7月2日、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの共感染を予防するためには、マスクが重要な役割を果たすと提言した。この研究は、同大遺伝子病制御研究所癌生物分野の野口昌幸名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Internal Medicine誌」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
現在、新型コロナウイルスに対するワクチン接種により、新規感染者の減少が見られ、その効果が期待されている。このような流れの中で、ワクチン接種後のマスク着用の必要性が世界の各国で議論されている。ワクチンの効果に過剰な期待をするあまり、ワクチン接種者はマスク着用が不要であると宣言する国も出てきている。
一方で、感染力がさらに強化された変異種が世界に蔓延しつつあり、変異種に対するワクチンの効果も限定的だと指摘されている。このように、新型コロナウイルス感染症ワクチン普及後のマスクの必要性に関しては、世界中の各国で多くの議論がなされており、いまだ結論が出ていない。
また、新型コロナウイルスとインフルエンザの共感染による重症化が報告されており、社会への影響が大変危惧されている。しかし実際には、日本の2020/2021年冬のインフルエンザ感染者数は例年に比べて減少しており、新型コロナウイルスとインフルエンザの共感染もごく少数の発症だった。このインフルエンザ罹患数減少の要因の一つとして、マスクの着用が考えられる。
2020/2021年インフルシーズン罹患数、例年の2,000分の1に減
今回、研究グループは厚生労働省が公開している、日本の2012~2021年のインフルエンザワクチン供給量・接種数と、国立感染研究所が公開している約5,000の日本の定点医療機関におけるインフルエンザ罹患数の統計解析を実施した。
その結果、インフルエンザワクチンの日本全体での供給量・摂取数はここ10年間ほとんど変化していない一方で、2020/2021年冬のインフルエンザシーズンにおけるインフルエンザ罹患数は560人となり、例年の2,000分の1だった。このインフルエンザ罹患数減少の主たる要因の一つとして、新型コロナウイルス対策としてのマスク着用が重要な要因であったと考えられるという。
「マスク着用」「手洗い」「集団での行動や飲食の回避」などの感染予防、引き続き重要に
新型コロナウイルス感染症は、ワクチン接種で新規感染者数の減少と落ち着きが期待されているが、新型コロナウイルス治療薬の開発は途上段階だ。また、例年、日本では数千人以上がインフルエンザにより死亡しているとされ、新型コロナウイルスとの共感染は重篤な社会的影響を及ぼしかねない。
日本人は、欧米各国と異なり、以前からマスクの着用に抵抗がなく、インフルエンザ流行期や、花粉症の時期には、日常的にマスクを着用する生活を送ってきた。研究グループは、マスクをすること、手洗いをすること、集団での行動や飲食を回避することなどの感染予防がこれからも引き続き重要だと述べている。
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・北海道大学 プレスリリース