口腔がん全体の約10%が口底がん、臨床病理学的特徴は不明
東京医科歯科大学は7月1日、口底がんを前方型と後方型で分類して比較し、前方型は全生存率が低く、その原因は重複がんおよびたばこ関連疾患であることが明らかになったと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科顎口腔外科学分野の原田浩之教授と及川悠特任助教らの研究グループと、同研究科口腔病理学分野の池田通教授との共同研究によるもの。研究成果は「Frontiers in Oncology」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
口腔がんの発生頻度は全がんの約1~2%を占め、その罹患数は年間約1万2,000人と推定され、高齢社会により罹患数は増加傾向にある。口腔がん全体のうち口底部に発生するがんは約10%に過ぎず、その発生率の低さからこれまで口底がんに関する報告は限られていた。その中で、口腔がん、特に口底がんは喫煙や重複がんとの関連が示唆されていたが、重複がんに罹患しやすいタイプの口底がんや予後不良因子など、治療成績向上につながる臨床病理学的な特徴については不明のままだった。
前方型の半数以上が重複がんに罹患、全生存率65.4%、死因にたばこ関連疾患
過去15年間で加療した口腔がん1,220例のうち、口底がんは62例。研究グループは口底の解剖学的な特徴から、前方型口底がん32例と後方型口底がん30例に分類して解析した。その結果、患者背景として前方型口底がんは男性の割合(96.9%)が高く、喫煙量は、前方型が920、後方型が500(ブリンクマン指数換算)と、前方型が有意に高いことがわかった。
また、臨床病理学的な特徴として、前方型口底がんは頸部リンパ節転移様相が進行していることと、重複がんの割合が高いことが明らかになった。前方型口底がんの半数以上(32例中17例)が重複がんに罹患しているという結果であり、極めて発生率が高いことがわかった。発生部位は咽頭・喉頭や上部消化管(食道、胃など)が多く、重複がんに関する多変量解析の結果、前方型口底がんが独立した危険因子として抽出された。
生存率を比較すると、疾患特異的生存率は前方型口底がん92.8%、後方型口底がん95.0%だったが、全生存率を比較すると、前方型口底がん65.4%、後方型口底がんが95.0%と前方型口底がんの生存率が有意に低い結果となった。さらに前方型口底がんの死因を検証すると、重複がんおよび循環器疾患や肺疾患などのたばこ関連疾患であることがわかった。
禁煙指導や他の臓器の検査実施で治療成績向上へ
前方型口底がんが、「重複がん」および「たばこ関連疾患」と関連することが新たにわかった。治療成績向上のためには、循環器疾患や肺疾患を含むたばこ関連疾患の予防のため、早期の禁煙指導が重要だ。「重複がんは他臓器に発生するため、口腔領域のみならず、消化管内視鏡検査やPET/CTなどの検査を定期的に実施することで、他がんの早期発見・早期治療が可能となり、治療成績の向上につながると考えられる」と、研究グループは述べている。
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