65歳時点での「サルコペニア疑い」は?神戸市で調査
神戸大学は6月28日、65歳の神戸市民約1,800人の特定健診の結果、および下腿周囲径や握力のデータを解析し、少なくとも約3%にサルコペニア疑いが存在し、痩せや運動不足の人ほど健康上のリスクが高くなることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科健康創造推進学分野の田守義和特命教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Geriatrics and Gerontology International」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
社会の高齢化に伴い、加齢や痩せによる筋肉の減少(サルコペニア)や、身体機能や認知機能の低下を伴った要介護状態の前段階であるフレイルが、健康寿命を考える上で重要な問題としてクローズアップされてきた。それにも関わらず、今まではサルコペニアの診断には専用の測定機器が必要だったため、一般の医療現場や健診会場での診断が難しく、サルコペニアの有病率や実情は詳しくは不明だった。
2019年11月から、日本サルコペニア・フレイル学会が新たな診断基準を導入し、比較的簡便にサルコペニアの疑いを診断できるようになった。65歳という高齢者の入り口の段階で、サルコペニア疑いの人がどれくらい存在し、どのような病態にあるのかを明らかにすることは、高齢者のフレイルや要介護状態を減らす上で極めて意義がある。
「サルコペニア疑い」約3%、痩せと運動不足が関係か
今回研究グループは、65歳の神戸市民で、国民健康保険加入者の約1,800人を対象に、日本サルコペニア・フレイル学会が導入した新たな診断基準に沿って、下腿周囲径と握力のデータから、サルコペニア疑いの有病率を明らかにした。同時に、特定健診の問診結果から、サルコペニア疑いの人たちの日常における身体的機能や認知機能を分析した。
サルコペニア疑いの人は約3%存在し、ほとんどが肥満を合併しておらず、痩せているほど疑いの頻度が増えた。サルコペニア疑いの人は、特定健診の検査結果は、サルコペニア疑いでない人に比較して、むしろ好ましい結果を示したが、心身機能の低下を評価する基本チェックリストを用いた聞き取りでは、日常の活動度、運動機能、栄養状態、閉じこもり、認知機能といった項目で心身の機能が低下していた。このことから、サルコペニア疑いの原因として、痩せと運動不足が推定された。
65歳からは健診に加え、サルコペニアを評価できる検査を受けることが重要
今回の研究で、日本の代表的な大都市の1つである神戸では、65歳という若年高齢者であっても、少なくとも約3%の人にはサルコペニア疑いがあり、生活習慣病の予防を目的とした特定健診では異常がなくても、日常生活の広い範囲で心身の機能が低下していることが初めて証明された。
サルコペニアには早期からの介入が有効であることを考えると、将来の要介護や寝たきりを減らしていく上では、現在の特定健診に加え、サルコペニアを評価できる検査を受けることが望ましいと考えられる。
「65歳からは通常の健診に加え、筋力や筋量を測定する検査が必要。65歳以上では肥満のみならず、痩せにも注意し、バランスの良い食事や適切な運動を心掛けることが大切だ。とくに昨今、コロナ禍で外出する機会が減り自宅に居る時間が長くなっているが、できるだけ散歩や体操を行うことが重要」と、田守特命教授は述べている。
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