国内2万6,000人対象のインターネット調査を2月に実施
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は6月25日、新型コロナウイルスワクチンに関して「ワクチンを打ちたくない」と答えた人(ワクチン忌避者)の割合と、関連する要因を明らかにするために、2021年2月に全国全ての都道府県から2万6,000人が参加する大規模インターネット調査を実施し、その結果を発表した。この研究は、同センタートランスレーショナル・メディカルセンターの大久保亮室長、福島県立医科大学臨床研究イノベーションセンターの吉岡貴史助教、大阪市立大学大学院公衆衛生学の大藤さとこ准教授、聖路加国際病院の松尾貴公医師、大阪国際がん研究センターの田淵貴大副部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Vaccines」に掲載されている。
画像はリリースより
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は現在、全世界的な公衆衛生上の問題である。感染収束に必要な集団免疫の獲得には、多くの人がCOVID-19ワクチンを接種する必要がある。その集団免疫の確立に、COVID-19ワクチン忌避が大きな障害となる。日本でCOVID-19ワクチン忌避者の割合を調査した2つの研究はいずれも数千人を対象としたもので、日本全国を対象に研究参加者を集めてワクチン忌避者の割合を性別や年齢で比較した研究はなかった。このため大規模な研究で、COVID-19ワクチン忌避者の割合を調べる必要があった。
ワクチン忌避の理由と、教育歴/所得/気分の落ち込みなどの要因との関係を検討
研究グループは、2021年2月に日本全国から合計2万6,000人が参加した、新型コロナウイルスの社会格差を調査するインターネット調査プロジェクト(the Japan “COVID-19 and Society” Internet Survey:JACSIS)において、ワクチン忌避に関する調査を実施した。インターネット調査の限界を克服するため傾向スコアによる重みづけを用い、2016年に厚生労働省で行われた国民生活基礎調査の参加者と性別・年齢・社会経済状況などの分布が同様になるようにデータを調整した。
参加者からCOVID-19ワクチン接種に関しての考えを聴取し、「接種したい」「様子を見てから接種したい」「接種したくない」の3つの選択肢の中から、「接種したくない」と回答した人をワクチン忌避者と定義した。性別・年齢・所得・婚姻状況・職業・教育歴・喫煙歴・飲酒歴・併存疾患・COVID-19感染の既往・COVID-19による死への恐怖・自分がCOVID-19に罹患する可能性の見積もり・政府に対する不信・政府の新型コロナウイルス感染症対策への不信・COVID-19に罹患した場合の恥の認識・重度の気分の落ち込み・COVID-19罹患者数が多い地域への居住などの要因と、ワクチン忌避者の割合の関係を検討した。さらに、ワクチン接種希望者(「接種したい」「様子を見てから接種したい」)、ワクチン忌避者(「接種したくない」)それぞれに理由を聴取し、割合を算出した。
ワクチン忌避者の7割が「副反応が心配」、政府やコロナ政策への不信感も
ワクチン忌避者は全体で11.3%であった。しかし、若年女性(15~39歳)で15.6%、高齢男性(65~79歳)で4.8%と、年齢や性別によって、2倍以上の割合の差があった。また、ワクチン忌避者のうち70%以上が「副反応が心配だから」と回答していた。特に65~79歳の高齢者の80%以上がワクチン忌避の理由として「副反応が心配だから」を挙げていた。
さらに、「一人暮らし」「年間100万円未満の低所得」のほか、「中学卒業あるいは短大/専門学校卒業」といった教育歴、政府ないしコロナ政策への不信感がある、重度の気分の落ち込みがある人では、ワクチン忌避者の割合が高いという結果であり、その関連は65歳以上の高齢者でより顕著だった。
ワクチンの信頼性を高める支援、ポジティブな感情を引き起こすメッセージなどが必要
今回の研究結果は、若年、女性、一人暮らし、年間100万円未満の低所得、中学卒業あるいは短大/専門学校卒業といった教育歴、重度の気分の落ち込みがある人、政府ないしコロナ政策への不信感がある人では、ワクチン忌避者の割合が高くなるとの結果であり、これらの方に対して特にワクチンの信頼性を高めるような支援が必要であることを示している。
「ワクチンに対する信頼性が、新型コロナウイルスに対する不適切な情報(副反応に関する根拠に基づかない情報など)によって損なわれていることについての情報提供や、ワクチンを打つことが地域や社会の健康と回復につながるというワクチン接種に対するポジティブな感情を引き起こすようなメッセージを増やすことが必要と考えられる」と、研究グループは述べている。
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