ドナーの種類によりGVL効果は異なるのか?
東京大学医科学研究所は6月23日、急性白血病において、移植片対宿主病の発症が生存率に与える影響は、ドナーの種類により異なることを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所附属病院血液腫瘍内科の小沼貴晶助教らを含む日本造血・免疫細胞療法学会のドナー別・移植細胞ソース別ワーキンググループによるもの。研究成果は、「Clinical Cancer Research」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
急性白血病は、造血細胞の悪性腫瘍であり、同種造血細胞移植が最も実施されている疾患。同種造血細胞移植による白血病の根絶は、移植前処置とドナー免疫細胞による同種免疫反応の両者が重要であると考えられている。この同種免疫反応は移植片対白血病(GVL)効果といわれ、臨床的には移植片対宿主病の発症と相関して認められる。GVL効果は移植片に含まれる免疫細胞により誘導されることから、移植片対宿主病の発症頻度や重症度と同様に、ドナーの種類により異なる可能性が示唆されるが、これまで大規模な臨床研究では明らかにされていなかった。
急性白血病6,548例でGVHD発症が無病生存率に与える影響を後方視的に解析
研究グループは、日本造血細胞移植データセンターの移植登録一元管理プログラムによる登録データにおいて、2007年から2017年に初回の同種造血細胞移植が行われた16歳から65歳の急性骨髄性およびリンパ性白血病6,548症例を対象として、移植片対宿主病の発症が再発率や生存率に影響を与えるかどうか、ドナーそれぞれに関して、急性移植片対宿主病と慢性移植片対宿主病に分けて後方視的解析を実施した。
患者データの年齢中央値は47歳、急性骨髄性白血病は4,521例、急性リンパ性白血病は2,027例だった。ドナーは、HLAアリル一致血縁同胞が1,322例、HLAアリル一致非血縁が2,429例、非血縁臍帯血が2,797例だった。
「非血縁臍帯血」ドナーのみ、GVHD発症が無病生存率の改善に寄与
生存者の観察期間中央値41か月において、移植後3年時点における無病生存率は、HLA一致血縁同胞移植では55%、HLA一致非血縁移植では58%、非血縁臍帯血移植では53%だった。移植後3年時点における再発率は、HLA一致血縁同胞移植では34%、HLA一致非血縁移植では28%、HLA一致非血縁臍帯血移植では30%だった。
移植後100日のランドマーク解析では、臍帯血移植でのみ、グレードI–IIの急性移植片対宿主病の発症において無病生存率が有意に良好だった。時間依存性共変量を用いた多変量解析においても、臍帯血移植でのみ、グレードI–IIの急性移植片対宿主病による無病生存率改善効果が認められた。HLA一致血縁同胞移植やHLA一致非血縁移植では、急性移植片対宿主病の生存率に対する有用な効果は認められなかった。臍帯血移植によるこの効果は、再発率の抑制のみならず、非再発死亡率の抑制も同様に、無病生存率の改善に寄与していることがわかった。
一方、慢性移植片対宿主病の発症中央値である移植後129日のランドマーク解析では、臍帯血移植でのみ、限局型慢性移植片対宿主病の発症において無病生存率が有意に良好だった。時間依存性共変を用いた多変量解析においても、臍帯血移植でのみ、限局型慢性移植片対宿主病による無病生存率改善効果が認められた。HLA一致血縁同胞移植やHLA一致非血縁移植では、慢性移植片対宿主病の生存率に対する有用な効果は認められなかった。この効果により、むしろ非再発死亡率の抑制が無病生存率の改善に寄与していることがわかった。これらの臍帯血移植の優れた効果は、急性骨髄性白血病、移植時非寛解、HLA2座不適合で比較的保たれていた。
さらなる治療成績向上や臍帯血を用いた細胞療法の発展に期待
臍帯血移植の普及により、急性白血病を含む造血器疾患に対する同種造血細胞移植は拡大している。研究グループは、今回の研究について、「臍帯血移植における軽症移植片対宿主病による生存率改善効果を実証した大規模な臨床研究であり、造血器疾患に対する同種造血細胞移植のさらなる治療成績の改善や臍帯血を用いた免疫療法の発展に役立つことが期待される」と、述べている。
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