外来リハビリ/日常生活環境での歩行時の体幹制御を評価
畿央大学は6月22日、慢性腰痛患者では歩行時の体幹の変動性や安定性が異常になり、日常生活環境でより顕著になることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院神経リハビリテーション研究室の西祐樹 氏(博士後期課程)、森岡周教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Journal of Pain Research」に掲載されている。
画像はリリースより
慢性腰痛患者では、立位や持ち上げ動作中に体幹の変動性や安定性が異常になることはすでに明らかにされている。一方、歩行時の体幹制御異常については明らかになっていない。加えて、腰痛の運動制御の研究は、整えられた実験環境のみで調査されており、実際に腰痛が発生する日常生活環境では計測されていなかった。
そこで研究グループは、健常者と慢性腰痛患者を対象に、腰部に加速度計を装着し、「外来リハビリ環境」と、3日間の「日常生活環境」において計測した。加速度データから前後軸、左右軸それぞれにおいて、変動性の変数としてストライド間のSDおよびマルチスケールエントロピー、安定性の変数として最大リヤプノフ指数を算出した。
体幹の変動性/安定性異常は日常生活環境でより顕著
その結果、慢性腰痛患者では、左右軸のばらつき、前後軸の不安定性が増加しており、それは日常生活環境でより顕著になっていることがわかった。また、これらの歩行制御の変容は、日常生活環境においてのみ、痛みや恐怖、QOLと正の相関関係が認められたという。
このことから、外来のリハビリテーション環境だけでは慢性腰痛患者の運動制御に関する病態を把握しきれていない可能性が考えられた。また、左右軸は痛みや恐怖に基づいた代償的なばらつきの変化により、安定性を保持している一方で、前後軸は代償戦略が機能せずに不安定性が高くなっており、QOLの低下にまで波及していると考えられた。
日常生活環境での歩行の質的評価の重要性を示唆
今回の研究は、腰痛の増悪予防や病態把握における日常生活環境での歩行の質的評価の重要性を示唆したもの。「今後はケースシリーズや縦断研究で運動制御と腰痛の因果関係を明らかにしていく予定だ」と、研究グループは述べている。
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・畿央大学 プレスリリース