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新たな免疫不全症「AIOLOS異常症」を同定-東京医歯大ほか

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2021年06月23日 PM12:00

ヘテロマー干渉阻害による発症メカニズムであることも明らかに

東京医科歯科大学は6月22日、新しい免疫不全症(AIOLOS異常症)を同定し、その病気の発症機構がヘテロマー干渉阻害という機序によるものであることを初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野(小児科)の森尾友宏教授、理化学研究所生命医科学研究センター免疫転写制御研究チームの谷内一郎チームリーダーら、米国国立衛生研究所(NIH)、、かずさDNA研究所の研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Immunology」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

ヒトでは、数千以上の遺伝性疾患(遺伝子異常症)が知られている。遺伝子異常症というと、その遺伝子がコードするタンパク質の機能が落ちる(機能喪失、機能低下、優性阻害)、逆にタンパク質の機能が強くなりすぎて暴走する(機能亢進)などして、病気になるものと理解されてきた。一方、多くのタンパク質、特に細胞内のシグナルに関わる分子や遺伝子の発現をコントロールする分子は、他のタンパク質と共に複合体を作って機能しており、実際には遺伝子単独の機能の変化だけでなく、他の分子の機能に影響を与えて病気を起こしていることもあると考えられる。

CRISPR/Cas9による遺伝子治療でリンパ球の分化障害が改善することをマウスで証明

今回、研究グループは、B細胞欠損などのリンパ球の異常がみられた免疫不全症の家系例の網羅的な遺伝解析により、AIOLOSというリンパ球分化を司る分子の異常を世界で初めて発見。AIOLOSは転写因子で、同じ転写因子ファミリーに属するIKAROSなどと複合体(ヘテロダイマー)を形成してリンパ球分化に必要な遺伝子の働きを調整している。

患者に同定された変異は、AIOLOSの機能に重要な部位の1つのアミノ酸が他のアミノ酸に変化する変異だった。この変異は、AIOLOS自体の機能の低下とともに、ヘテロダイマーの形成を介してIKAROSの機能を強く抑えて、リンパ球の分化を障害して重症の免疫不全症が発症することを、モデル細胞や患者変異を導入したマウスモデルを用いて証明。AIOLOSの欠損・機能障害だけでは説明ができない、より重症な疾患が発症することになるという。

また、患者変異を導入したマウスに遺伝子編集技術()を用いて、AIOLOSがIKAROSと結合する部位を取り除く遺伝子治療を実施。この遺伝子治療により、患者変異導入マウスに見られたリンパ球の分化障害が改善することを明らかにした。

従来提唱されてきた遺伝子異常発症機構と異なるヘテロマー干渉阻害

今回明らかになった発症メカニズムは、従来提唱されてきた遺伝子異常の発症機構と異なるため、heteromeric interference(ヘテロマー干渉阻害)という名称を提唱した。複合体を形成する分子の異常では、いつもは仲間となって働く他の分子の働きを抑えたり、あるいは促進したりして、病気が発症している可能性がある。また、同じ遺伝子の異常でも思いがけず重症となったり、思わぬ合併症を起こしたりすることがある。このような場合にも、複合体を形成する他の分子への影響を考慮する必要があるとしている。

今回のように、一つひとつの遺伝子変異をマウスモデルなどで丹念に検証することで、病気の本態がより明らかになるものと思われるという。また、病態が明らかになれば、治療開発にも役立つ。研究グループは、将来的には、ヘテロマー干渉阻害による病気に対して、他の分子との結合を阻害する治療アプローチを示すことができるとしている。また、異常な分子がヘテロダイマーを形成するのをピンポイントで抑える薬を開発すれば、より有効な治療となるものと考える、と述べている。

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