■厚労研究で判明
調査は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、電話や情報通信機器を用いた服薬指導が2020年4月から時限的・特例的に実施されることになったのを受け、0410対応の処方箋を応需した薬局の対応を実用性や実効性、医療安全等の観点から検証するため、同11月から12月に全国の薬局に対してアンケート調査を行い、1万3868薬局から回答を得た。
0410対応と記載された処方箋に基づいて調剤した薬剤の交付手段を複数回答で聞いたところ、患者が来局して交付した薬局が新規患者では88.4%、2回目以降の患者では88.1%と約9割を占め、郵送や薬剤師などが訪問して交付した薬局の割合を大きく上回った。特に新規患者では、来局以外の手段で交付される割合が少なかった。
来局して薬剤を交付した理由を聞いたところ、「コロナが流行っている病院やクリニックに行くのは怖いけど、薬局に行くのは問題ない」などの回答が見られた。
さらに、0410対応と記載された処方箋の服薬指導を電話で行ったことがある薬局は、新規患者では13.4%、2回目以降の患者でも39.1%と4割未満にとどまった一方、対面のみで服薬指導を行った薬局は新規と2回目以降の患者で共に85%を超えた。対面で服薬指導を行った理由は「患者の希望」が約9割を占め、「薬剤師の判断」は1割にも満たなかった。
画像付き情報通信機器で服薬指導を行った薬局は1%未満にとどまり、現状では服薬指導に画像付き情報通信機器が活用されていなかった。
オンライン服薬指導の質にも課題が見られた。電話による服薬指導を実施したと回答した薬局で、対面と同等に情報の取得や提供ができたと回答したのは、新規患者では19.8%、2回目以降の患者では29.3%にとどまった。
同等にできなかった理由を複数回答で聞いたところ、新規患者、2回目以降の患者共に「患者に情報を正確に伝えられたかの判断が難しい」が7割以上と最も多く、「患者の情報を得るのが難しい」が6割以上となった。
特に「視覚情報が不足していた」と回答した薬局は新規患者では約7割、2回目以降の患者では約8割を占めた。電話では、薬剤師が薬剤を見せながら説明や情報提供を行うことができず、患者の表情や動作を通じて理解の程度を確認できないことや、薬剤師の指導対象と患者が認識する対象が一致しているかが担保しづらい状況が指摘されていた。
デバイスを用いる吸入薬や用量調節が必要な内服薬など薬剤の特性によっては、オンライン服薬指導が難しい場合があることも分かった。
亀井氏は、「時限的・特例的措置としてルールが設けられずにオンライン服薬指導が始まったため、現場が苦労したのではないか」と分析。
今後の普及に向けては、対面と同等に実施することが困難であることを前提とした制度設計に加え、「服薬指導については患者に応じて対面とオンラインを使い分けていく必要があり、薬剤師が責任を持って判断できるようスキルを身につけていく必要がある」と話している。