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気管支鏡検査時の飛沫を防ぐマスクを開発、11月発売予定-名大ほか

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2021年06月18日 AM10:45

気管支鏡検査は咳き込むため、予防策を行っても感染リスクが高い

名古屋大学は6月17日、気管支鏡などの内視鏡検査の際に患者が装着することにより検査時の飛沫拡散を防止するマスクの共同開発を名古屋のマスクメーカーとの産学連携事業として成功したと発表した。これは、同大大学院医学系研究科呼吸器内科学博士課程の安井裕智大学院生(現・豊橋市民病院呼吸器内科)、同大医学部附属病院呼吸器内科の岡地祥太郎病院助教、同大医学部の深津紀暁氏、同大高等研究院・JST創発的研究支援事業採択研究者・JST科学技術人材育成のコンソーシアムの構築事業次世代研究者育成プログラム対象助教・文部科学省研究大学強化促進事業;最先端イメージング分析センター/医工連携ユニット907プロジェクト(B3ユニット:若手新分野創成研究ユニット)・同大医学部医学系研究科呼吸器内科学の佐藤和秀S-YLC特任助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

世界的な新型コロナウイルス感染症()の流行が持続しており、日本でも今後も患者数増加が懸念される。医療現場では感染者の対応以外にも一般の診療を継続する中で、無症候性の患者の存在も報告されており、感染流行地域では常に感染防止策を講じる必要性がある。気管支鏡は肺がんをはじめとする呼吸器疾患の診断や治療に重要な検査だが、気道に内視鏡を挿入する特性上、飛沫発生による感染リスクの高い処置であり、実施の際は接触・飛沫予防策(目の防護具、長袖ガウン等)やN95マスク、またはそれと同等のマスクなどの予防策が推奨されている。しかし、これらの予防策を行っても気管支鏡検査時には咳き込みとともに大量の飛沫、エアロゾルが発生し、空間に存在する人や機器を汚染することで、防護具着脱の際や環境汚染による感染リスク上昇につながると考えられる。つまり、医療従事者のみならず検査を受ける患者への感染リスク増加につながる可能性がある。

折り目を工夫し切れ込みのある不織布サージカルマスク、産学連携で共同開発

研究グループは、患者側に使用できて飛沫発生を防止する気管支鏡検査用のマスクを名古屋に本社を持つマスクメーカーとともに産学連携事業として共同開発した。マスクは低コストで患者も使い慣れた不織布製サージカルマスクをもとにしている。マスクは折り目を工夫し、あらかじめ内視鏡や吸引チューブを通す切れ込みを有した設計になっている。また、同マスクは必要な時にすぐに使え、あらかじめ適切なサイズ・位置に切れ込みがあり、終了後はそのまま廃棄できる簡便さが特徴であり、マスクメーカーと共同で特許出願中だ。

仰臥位、側臥位、座位のいずれでも飛沫防御を確認、操作にも影響なし

同マスクの飛沫防止効果を可視化するために、微粒子高感度可視化実験による評価が、新日本空調株式会社の協力を得て実施された。微粒子可視化システム(ViEST)では、浮遊する微粒子を専用光源と専用超高感度カメラによって可視化できる。実験では、被検者に咳をさせ、同マスクを着用(内視鏡や吸引チューブを通した状態)している時とそうでない時を比較した。その結果、仰臥位(気管支鏡を想定)、側臥位(上部消化管内視鏡を想定)、座位(鼻咽頭検査を想定)のいずれでもマスクがあることによって飛沫が防御できることが確認された。

次に、このマスクを使って気管支鏡を行う場合の操作や患者への影響について確認。マネキンを使用した実験で、マスクを使用しても検査時間に影響がないことが示された。また、実際に患者にマスクをつけてもらい気管支鏡検査を行う臨床試験も終了し、現在結果を解析中だという。研究グループは、「これらの結果は今後論文として公表する予定で、結果はガイドライン化に向けて発信していきたいと考えている」としている。

上部消化管内視鏡、咽喉頭内視鏡、鼻咽頭ぬぐい液採取等でも活用できる可能性

同マスクは気管支鏡だけでなく、食道や胃の病気を調べる上部消化管内視鏡、鼻や喉の病気を調べる咽喉頭内視鏡、COVID-19 やインフルエンザの診断にも使われる鼻咽頭ぬぐい液採取等においても活用できる可能性がある。消化管内視鏡に関しては同大医学部病態内科学消化器内科の古川和宏病院講師と連携して、臨床研究、普及を目指していくという。日常生活でよく使われる不織布のサージカルマスクをもとに設計しており、使い捨て、低コストで簡便なため、検査・処置に伴う飛沫感染の予防に広く役立つことが期待できる。

同マスクは、2021年11月に、株式会社スズケンより「Kenz e-mask」として販売予定。

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