菜食はCOVID-19重症化リスクを下げる?
植物性食品中心の食習慣は、心臓病などの慢性疾患のリスクの低さと関連しているが、最新の研究から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患時の重症化リスクが低いこととも関連しているというデータが報告された。米スタンフォード病院のSara Seidelmann氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Nutrition Prevention & Health」に6月7日掲載された。
画像提供HealthDay
COVID-19パンデミック以降、食習慣とCOVID-19の罹患率や重症度との間に、何らかの関連があるのではないかとの仮説が立てられている。しかし検証はされていない。Seidelmann氏らは、欧米6カ国(米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)の医療従事者を対象とするWebアンケートを行い、この仮説の検証を試みた。回答者の食習慣を過去1年間の食物摂取頻度に関する質問により把握し、COVID-19の罹患状況については、感染の有無と、感染していた場合は重症度と罹病期間を質問した。
解析対象者数は、COVID-19罹患者が568人、非罹患者が2,316人であり、罹患者のうち430人は無症候性~軽症で、138人は中等症~重症だった。多変量ロジスティック回帰分析で交絡因子(年齢、性別、人種/民族、国、喫煙・運動習慣、BMI、基礎疾患、既往症、医療の職域など)の影響を調整後、植物性食品ベースの食事を実践していた群はそうでない群に比較して、中等症~重症のCOVID-19に罹患していた人の割合が73%有意に少ないことが分かった〔オッズ比(OR)0.27(95%信頼区間0.10~0.81)〕。
植物性食品ベースの食事を実践している群にペスカタリアン(魚は摂取するベジタリアン)を加えた解析でも、オッズ比は0.41(同0.17~0.99)であり、中等症以上のCOVID-19に罹患した人の割合が有意に少なかった。一方、低炭水化物で高タンパクの食事を実践していた群では、植物性食品ベースの食事を実践している群に比較してオッズ比3.86(同1.13~13.24)となり、中等症以上のCOVID-19に罹患した人の割合が有意に多かった。なお、食習慣とCOVID-19の罹患率、および罹患した場合の罹病期間との間には、有意な関連は認められなかった。
論文の上席著者であるSeidelmann氏は、「われわれの研究結果は、健康的な食事がCOVID-19に罹患した場合の重症化を抑制するように働く可能性を示唆している」と語っている。
植物性食品ベースの食事とは、野菜や豆・ナッツ類が多く、家禽、赤肉、加工肉は少ないことを特徴とする。植物性食品には、免疫システムにとって重要な栄養素、中でもポリフェノールやカロテノイドなどの植物性化学物質、およびビタミンやミネラルが豊富に含まれている。また、魚にはビタミンDとオメガ3脂肪酸が豊富に含まれていて、それらには抗炎症作用がある。ただし、本研究は因果関係を示すものではなく、また食習慣やCOVID-19の重症度が本人からの報告に基づくものであり、客観的には評価されていない。
このような限界点を踏まえ、英国の栄養とCOVID-19タスクフォースのShane McAuliffe氏は、本研究の結果を次のように解釈している。「適切な免疫反応には質の高い食事が重要であり、そのような食事は感染症の罹患とその重症度に影響を与える可能性がある。今回報告された研究も、食習慣や栄養状態とCOVID-19との関連について、より適切にデザインされた前向き研究が必要であることを強調している」。
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